本題に戻りまして。
私の好きな作家さんというのは非常に興味深い人物で、どこかで世の中のことを考えて作品を通して何かを伝えようとしている。
そのような人はこの世界に幾人も居て、執筆というのは世の中の善と悪の戦いのような物であり、作品と言うのは戦っている人が鳴らした剣の音のような物だ、と言うようなことを言っていました。
今回のインタビュー集では、孤独ということについて語っている部分がありました。
一人の人間が、孤独に、かつ十全に生きると言うことの価値ということを語っていました。
この、十全に生きる、というのは私たちにとっても重要なことです。師父からも、与えられた命をきちんと生ききるために武術を学ぶのだと教わってきました。
そのために、心と身体を哲学と運動で活用させてゆくのです。
そのことと孤独の繋がりです。
この作家さんは、人間がそのようにして自分を生きるということは、年齢を重ねるにつれていずれ難しくなるということを話していました。
家庭のことや仕事のことなどで忙しくて、自分の生き方に目をむけることがおろそかにされてゆくためです。
私も同感です。
だからこそ、私のところに来てくれて稽古をしてくれる人にとっては、そのことが大切になってくると思っています。
社会的な事務的な処理をすることでおろそかにされがちな自分の命の活かし方をしっかりと自覚する。
おそらく、子供を病ませてしまう親というのは、自分の命をおろそかにしてその分を子供に押し付けて楽をしてきた人なのではないでしょうか。
自分の責任は自分で持たないといけません。
自分の支払いを人にさせようとしたとき、人は乞食か盗人になります。
そしてそのような人は世の中にあふれているように思える。
この作家の先生は、オウム真理教に関するルポなどもしているのですけれども、あの事件が起きた背景にはそのような、人が自分の命を十全に生ききることが難しい社会の存在という物があるのではないかと語っていました。
つづく