猪八戒の次に書くとなれば当然沙悟浄なのですが、これ、西遊記好きの中では昔から引っかかっているキャラクターです。
日本では河童だなどと言われていますが、これは中国での描写にはありません。
また、夜叉であるというお話もあります。
中国では夜叉は水中に居て、竜宮の使いをしていたりするので、そう明言されているればすっきりするのですがそうとも書かれていない。
そのため、揚子江ワニを表現したものなのではないかなどと言われてもいますが、ほんとになんだかわからなくて、原作ではただ黒い化け物とだけあるようです。
ではこれが何かというと、やはり平岩版では努力して地道に生きて天兵となった人間だったということになっています。
そうして捲簾大将という天帝を守護する兵士の大将にまで出世するのですが、そんな彼がいかな罪によって地に堕とされることになったかというと、宝物の器を手を滑らして割ってしまったという理由でです。
地味!!
こいつはそういうところが地味なのです。
そしてそういう地味な存在であるにも関わらず、ものすごい大罪であるとして地上に堕とされてしまったところがあまりに悲しい。
孫悟空の混沌そのものの力による暴力の罪、三蔵法師の傲慢の罪、そして猪八戒の好色の罪と並べて、この人の罪は「うっかり」。
かわいそすぎる。
なんも本人の中に悪意の要素が無い。ただの事故。
そのためか、彼は本編中では実直で地味な存在として、強敵が現れても打ち合いには参加せずに後方で三蔵法師を護る役割というキャラクターなのですが、これはある意味で、彼の心に罪自体がそれほどないために、償いとして克服すべき困難がそれほど無いからなのではないかという気もします。
これは呼び名にも表れていて、日本ではあまり一般的には用いられていないのですが、中国での孫悟空の呼び名は孫行者と言います。猪八戒はあだ名が猪悟能であるのに対して、沙悟浄は沙和尚と呼ばれているところからも伺えます。
行者、や八戒を護っていると言うのと比べて、和尚というのはちょっと修行歴が上のような印象があります。
つづく