前回は古い信仰と生贄について書きました。
今回は「アメリカン・ゴッズ」の中の新しい神々への話から始めてみましょう。
古い神々に生贄を捧げることがなくなったからと言って、人々から信仰が無くなったということはありません。
資本主義社会に生きる現代人は、テクノロジーや情報を信仰しています。
それらに対して、ほぼ無批判に頼り切り、これが大事なのですが、生贄を捧げている。
「アメリカン・ゴッズ」に登場する最も印象的な新しい神は「テクニカル・ボーイ」と呼ばれる若い神です。
彼は小太りでリムジンに乗った、いかにもハッカー上がりでGAFAの創業者になったようなIT長者の姿をしています。
日本でもそういうタイプの人が居てカリスマ的な信仰を集めているようですね。
そういう人が本当に神様なのです。
また、情報の神は「メディア」と呼ばれる女神です。
彼女はテレビの中に住んでいて、そこから対話したり自由に情報を送受信します。
いわゆる「セレブ」「ハリウッド・セレブ」と呼ばれるようなシンガーやアクター、モデルさんたちに対して、非常に沢山の人達が信仰心を持っていますね。
「テクニカル・ボーイ」や「メディア」に対して、非常に沢山の現代人が多大な生贄を捧げています。
それは資金であり、労力であり、時間であり、思考です。
いわば、自分自身の全てと言ってもいいでしょう。
そういった物を全て技術や情報に捧げている人たちはまったく珍しい存在ではありません。
そのために彼ら「新しい神々」は圧倒的な強さを誇っていて、オーディンやカーリー、また、名前も忘れられてしまったような南米先住民の神々を全滅させようとしています。
これ、考えてみたら奇妙なお話です。
古い神々が、新しい神々を失墜させて自分たち古代信仰への生贄を取り戻そうとするのは分かります。
しかし、新しい神々はもう圧勝が確約されているのでそんな必要はないのですよね。
その部分について、次回は考察いたしましょう。