尊我斎先生の少林拳術秘訣について何度か書いてきましたが、その中で実に、個人的に興味深い記述がありました。
それは、南派拳術の根幹にあるのは、岳飛の拳術であるというお話です。
それだけだったらいつもの愛国的仮託だというだけなのですが、具体的にそれがなんなのかが書いてあって面白い。
それが何かともうしますと、つまり双把です。
またの名を虎撲。
つまり、両手を同時に突き出すという技です。
これ、嵩山少林寺の武術でも見るのですけれど、おそらく南から取り入れられた、という解釈なのでしょう。
確かに、この両手を同時に前に突き出す技の重要度が南派だと一桁違います。
K先生もご自身の研究の中でこの技は南派の代表的な技だと言われていました。
この技は空手や格闘技の定石からするとまったく威力が出ません。
つまり、根本的な用勁が出来ていないと成立しない技です。
これを活用し、これに付随する形で全体像が出来て行ったというような順番で南派の基本が出来て行ったという解釈は面白い。
この用勁を中核にしたのが、北では心意拳だということができると思います。
もちろん心意も岳飛創始伝説があります。
そう考えるとやはり、心意が南進して南派に大きな影響を与えたってことは充分にありそうです。
私自身が体験してこれまでの研究のテーマにしていたことが、まさに近代南派の思想的な中興の祖とも言えそうな書に書かれていたと言うのは大きな発見です。