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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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中華帝国

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 学生さんとのプライベート・レッスンで、中華について質問を受けたので少し話しました。
 中華思想を知るということが、結局は中国武術について知るということです。
 なので私の知って居る中華思想の嫌いな先生は、自分には中華思想がないから教えてるのは中国武術ではなく中国の武術だ、とよく言っていました。
 その位、中国武術というシステムのデザインと思想は切り離せないものです。
 我々の門では包拳礼という物を行うのですが、ここには五湖四海皆兄弟という意味もあります。
 左右の手で五本の指と四本の指を示しているのですね。
 四海、というのは四方向に海です。
 中国では、中国大陸、という言葉があります。
 ユーラシア大陸ではなくて中国大陸です。
 そのため、四方向に海があるのです。
 現代の中国は文化の中心地が東に寄っていますが、シルクロードの時代は真ん中の方の洛陽(西安)にありました。
 ローマ帝国から文明が一繋ぎにつながっていたのです。
 その時代に、中華という発想が浸透しました。
 もともと、他民族、多国籍の連合国家が中国です。
 作家の馳星周氏曰く「彼らにとってどこまでが中国なのかが分からない」です。
 中国西側に居る回族と言われる少数民族の人たちは長年の歴史によって現在は外見がかなり漢民族的になっていますが、もともとはペルシャ人やトルコ人などで、もろにアラブ系の外見の人たちだったそうです。
 隋唐演義でも登場する楊貴妃の家臣であった安禄山は、一時乱に成功して光烈帝と称する皇帝の座に就きますが、彼もこのペルシア系の人です。
 また、中国仏教の総本山である少林寺の祖である達磨大師もインドから来ました。私たちの少林拳はインドからもたらされたとされています。
 日本人の中には空手が日本武道だなどと言いだす人もいますが、これは実に嘆かわしい話です。
 空手という言葉を付けたのは確かに日本ですが、そもそもは唐手(中国の手)と言って琉球王国の土着武術でした。
 そして琉球王国もまた周王朝などの自治国であり、中華帝国の中の一国です。
 江戸時代に日本が攻め込んできて、その後も二十統治が続き、大戦を経由して昭和に入って現代の日本国沖縄県として定着しました。
 沖縄の若い人は我々のことをナイチャー(内地の人)と言いますが、お年寄りはヤマトンチュ(大和国の人)と言います。彼らにとっては自分たちはオキナワンチュやウミンチュであり、決して大和国人ではないのです。
 中華帝国においては、ベトナムやタイ、朝鮮半島もその一部です。
 フランスがベトナムに攻めてきたときに、これを追い払ったのは洪門でした。
 タイ人と同じとされるタイ族というのは中国の少数民族の一つです。彼らには泰拳と言って、ボクシングと融合される前の、競技ではない武術としてのムエタイが伝わっています。
 また朝鮮半島は、朝鮮族、髙麗族、倍達族という少数民族の住む半島でした。長らく現地の兵士という物を持たず、中華帝国の軍が配属されてきていて、現地人による防衛はされていませんでした。
 そのため朝鮮では、一番偉いのは内地人、二番目が貴族、次が平民で最後が被差別民という、厳しい階級社会だったと聞きます。
 その最南端が東海への侵略拠点の軍港であり、兵糧の政策として牧畜がもたらされました。これが焼き肉文化の始まりです。
 そこから日本へも元寇が行われました。
 当然、もしあれがそのまま順当に行っていたら、日本も中華帝国の一部となっていました。
 彼らの意識では当然日本列島などは魏志倭人伝の時代に発見された帝国内の一諸島に過ぎません。
 民族としては、移民した少数民族の苗族の系統だとみなしているようです。
 実際、清の時代の正規軍の制式兵装には、倭刀という物がありました。
 これは中国で製造された日本刀です。
 倭寇た振るう日本刀が強力だというので、彼らも用いるようになったのです。
 これが多民族国家としての歴史というものなのでしょう。
 ちなみにこの時代、国教はチベット仏教で、支配階級はモンゴル系の人々でした。
 このような、ローマ帝国やインドとの交流、南進の歴史という物を抜きにしては、中国武術というものは理解できないでしょう。
 特に日本人は単一純血至上主義が高いようで、歴史的な混交の中で交配、洗練されてきた物の価値に関心が薄く、すぐに日本至上主義を持ち出そうとする癖があるように思います。
 日本人である私が中国武術の師父になったということには、コスモポリタン的価値観への道が開けたことのように思う部分もあります。
 この文化、価値観を持つことで、世界のどこででも通じる物を持つ日本人種という物になれたように思います。
 21世紀にあたり、その価値観を多くの皆さんにも持ってもらえたらよいと私は思っています。
 いつまでも世界の田舎者でいるよりも、それは実は日本を愛するということにつながりうると感じています。 

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