思わぬことになってしまいましたが、そもそもの今回の調査目標は五祖拳でした。
それがフィリピンにてクンタオ(拳道)という武術になっていると聞いていたからです。
五祖拳は、鶴拳はじめ、太祖拳、羅漢拳、猴拳などの五派が総合された南派拳法で、北で編纂された少林拳の南進の歴史をそのまま意味している門派です。
エスクリマと蔡李佛拳をする者として、その実態を調査したかったのです。
しかし、現地でクンタオは見つけることが出来ず、また五祖拳も見つかりませんでした。
代わりに、そこをもう一飛び越えてフィリピン武術内中国武術的なラプンティ・アルニスと遭遇できました。
それまで知りもしなかった、まったくの新発見をすることが出来、これを持ち帰ることが出来たのは大きな喜びです。
そしてさらに新たなる発掘物として、モンゴシというラプンティの徒手の部のフィリピン式カンフーの存在が見つかりました。
フィリピンはいまだ言語統一が進んでおらず、手に入りやすい武術書などは発行されていないようです。書店では輸入品の英語の本が多くの棚をしめていました。
このため、調査はフィールド・ワークが主体にならざるを得ません。
とりあえず私はここまでを獲得しました。
少林拳やフィリピン武術、またインドネシア武術などへの、更なる研究者が現れてこれを引き継いでくれることを望みます。
日本の武術界のみならず、アジアの武術における研究の大きな進展がみられ、それらの武術の美点がより多くの必要としている人の手に届くことを望みます。
いまの武術界は、あまりにも自己流や創作が増えすぎていて、歴史によって熟成されてきた人類の遺産が見失われつつあるように思います。
もちろんそれらが護身術やビジネスなどで劇的な功利性を示すとは思っていないのですが、歴史の最先端に居る現代人として、保護して未来に送ることができたらと思っています。