先日も、ある興行格闘家が空手を日本武道だと言っているのを目にしてしまいました。
しかも、よりによって沖縄空手を標榜している流派を名乗っている方です。
ちなみに私は、その流派の正統の偉い先生から、それが中国武術の断片を収集して作られた経緯のお話を直接教わったことがあります。
お礼に私も内功を一つお伝えしました。
問題の興行選手の発言を要約するとこういうものでした。
「古伝の空手と××(今回の趣旨とはそれるので名前は伏せますが日本人の中国武術の先生が作った創作流派)の練習を今日した→昔の日本人のレベルは世界最高位にあると感じた」
これはひどい話です。
どこにも昔(少なくとも近代以前)の日本人がやっていた物なんて登場していないのに、結論として無理矢理なこじつけをしている。
いまだにこういう「空手は武士道」的な話をする人が居るのですね。
幼児に「日本民族」と連呼させる幼稚園と同じ類の人々です。
単に不勉強で無知なだけなのか、それともある種のゆがんだ愛国向からくる捏造史観を意図的に流布しているのかは分りませんが、いずれにしよ極めて悪質です。
このような虚言の発信が、世の中にどれだけの悪影響を及ぼすことか。
のみならず、これは実はこの人個人にとっても非常に不利益な物です。
つまりは、自分が学んでいる先生を信頼していないと言っているに等しい。
自分の先生やその伝系の偉大さを信じておらず、捏造した虎の威を借りている。
本当に自分の先生が偉大だと思っているなら、昔の日本人云々を言い出す必要は無く「うちの先生はすごい」で済む話です。
それを一般化して、論点をぼかすというひどい詐術が行われています。
この発言者のいうことを真に受けるなら、自分の流派の先人のレベルは当時の一般人レベルと公言していることになります。
まったくひどい話です。
かかわった全員に不利益しかもたらしていない。
こういう無責任な人が大きな声で出鱈目を叫んでいる限りは、本物はいつまでも日の目を見ることは難しいでしょう。
別に日の目など見なくてもいいのかもしれませんが、身内を名乗る人間にこんな風に足を引っ張られ続けるというのは、お気の毒にとしか言いようがありません。
同じことは日本の中国武術や古武術の世界でも言えます。
自称古流の先生という、創作技法の人たちが山ほどいます。
その人達が自己流どまりのレベルで名を騙っている限り、真伝は誤解され、侮られ続けるでしょう。
後継者不足に直結している問題です。
道系を継ぐということは、自分のことだけではなく、お世話になった人や同じ世界の人々の将来のことまでを考えて一挙一動をしてゆかないといけない。
少なくとも私はそう思って師父として活動しています。