ラプンティ・アルニスと普段は言っていますが、正式にはラプンティ・アルニス・デ・アバニコと言います。
アバニコと言うのは扇子のことで、暑いときに自分を仰ぐような動作で兵器を振ることを表現しています。
このアバニコという振りは、エスクリマではメジャーな物ですが、特にうちの派ではこれを重視するために流儀名についているのでしょう。
実際、接近戦ばかりをするというスタイルなので、ほとんどがこのアバニコになります。
このアバニコ、新陰流にもあるのだと友達の二天先生から聞きました。
これは新陰流が倭寇武術に大きな影響を与えたのだということを考えると実に興味深いところです。
当時の倭寇との交戦記録に「倭刀は左右の変化が素早い」とあることを考えると、このアバニコ動作がやはり使われていたのかもしれません。
ラプンティ・アルニスは西洋、東南アジア、中国、日本の武術がミックスされて生まれたため、ほかのエスクリマと同じくフェンシングに土台を持っています。
フェンシングとは「柵で囲い込む」という意味です。
自分の遣っている刀剣や棒と体でフェンスを作って、それで相手を囲い込んでゆくと言うことです。
その基本がヴァーティカル・ブロックという真っ直ぐに身体の前に武器を立てて両手で固定した形です。
これがすべてのフェンスの基本であり、ほかはこれで用いられている原則の応用です。
アバニコも同様です。
手元で短く降る動作の中で、武器の陰に体を隠して防御し、相手の武器と打ち合わせになったときのために左手の用意をかくしています。
その時に用いる身体の動作は、ラプンティ・アルニス独特のツイスティングというものです。
これは足を絡めて体をねじると言う動作で、中国武術で多用されるものです。
格闘技的な視点で見るとどう使うのかわからない物なのですが、アバニコの時に最も小さな動作でフェンスを張ることを考えると非常に有効な物です。
そしてこの動作に合わせて攻撃の威力を増したり相手の武器を奪い取る力としたりします。
西洋剣術の合理的発想、日本剣術の手わざ、中国武術の身体の要素をミックスしたというのは、実は有用な物をどん欲にハロハロ(ミックス)した結果なのではないかと思えます。