先日、テレビである体操選手が特集されているのを観ました。
実は彼の体操の先生に私はお世話になったことがあります。
独自の身体理論を展開してられる先生で、その理論を元に私も体の状態を計測してもらったのですが、右半分と左半分の体重を計ってもらった処、左右の重さの差がほぼなかったことをひどく驚かれて「こんな人間がいる訳はない」と言っていられました。
人間は肝臓が右にしかないし、心臓はやや左より、左右の筋肉にはバランスが偏るので、中心の軸を平素から意識してでもいない限り、左右の重心は違うのが自然なのです。
ということはつまり、私がその時に使っていた中心軸は物理的な意味での正中線ではなくて、自分が身体を左右に使うのにバランスが良いと感じた軸を任意で作っていたわけです。
この辺りは羅漢気功などでも作り上げる部分であったりします。
さてその先生の弟子の体操選手ですが、彼が日常で大切にしている訓練が、肩甲骨をいつでも外に出せるようにするものだということでした。
体操では肩甲骨を寄せることで骨格を強固な状態にして自重を支えると聞いたことがあります。
これは我々の考えからすると絶対にやってはダメなことです。
骨を寄せるということは、筋肉を縮めて集めるということに繋がります。
こういったことを我々は力みの一種とみなして忌避します。
伸筋抜骨と言って、筋は伸ばし、骨は抜くように関節を外に広げて全身をのびやかにすることが基本ですので、力こぶを作ったり縮こまるような動きは気血の巡りを滞らせるとされて好まれません。
この選手は、筋トレはあえてしないと言っていました。体操の練習以外でつく筋肉は重りになって邪魔なだけだからだということです。
最低限の筋肉で最大のパフォーマンスを引き出そうとすると、やはり骨をそのように固めて使うことが必要になってくるのでしょう。
体操競技というのが西洋体育におけるジムナスティックというものの根本であることを考える上で、実に興味深い我々との差異です。