蔡李佛拳には、大きく言って三つの派があると言われています。
一つは元祖の洪聖館スタイル、次は成立を同じくしながらもより太平天国活動に寄り添った形となった鴻勝館。最後はその次の三世の世代になって作られた、北勝館です。
これらは、もっとも伝統を沢山保存している洪聖館、功の強い鴻勝館、都市戦などの勝敗に優れた北勝館とみなされているようです。
私たちのは鴻勝館なのですが、我々香港鴻勝館崔章武術會の開祖である崔章先生は、陳吽盛先生という蔡李佛三世の先生の弟子です。
しかし同時に、北勝館の初代である譚三先生より北勝館の技術も学ばれたそうです。
そのため、うちは鴻勝館の中では少し北勝っぽいとも言われています。
この北勝館は現代っぽくて、套路の数は三つにまとめられているそうです。
これは伝統保持の洪聖館が百を超える套路を守っていることに比べると、だいぶ要約されていると言えるでしょう。
そこから見るなら、徒手の套路に限ってではありますが、初級、中級、上級という三段階をそれぞれ一つづつの套路で学ぶというという体系は画期的であるかと思います。
初級が平拳、中級十字拳、上級が扣打拳です。
我々鴻勝館は、およそ十ほどの套路があり、それらが初級だ中級だと分かれています。
また、そのうちの四つは太平天国の名前が付いた套路となっています。
洪聖館と較べればだいぶ少ないように感じますが、それでもこれは普通の拳法として考えると少ない物ではありません。
カラテのように入門してすぐからみんなで並んで一通り型をなぞるようなやり方とは違い、自分の段階にあった物だけをやりこんでゆくので、すべてで功を練ってゆくと何年もかかります。
またこの、どの套路やどの練功法を学んでいるかというのがその人の度合いを示す物差しにもなるので、誰が何功や何套路を得ているかというのは非常に重要なものになります。余談までに。
この段階分けを、北勝館の段階と比較してみた時に気づいたことがあります。
太平天国套路の内、一つに平字拳があります。
鴻勝館の中級には、大十字拳というものがあります。また、同様の小十字という物もあります。
そして、上級は連環靠打拳と言います。
平字拳、大(小)十字拳、連環靠打拳。
平拳、十字拳、扣打拳。
靠と扣はともに「こう」と読みます。
これ、ほぼ重なっているように思えます。
だとすると、この三つが蔡李佛の縦糸と考えてもいいと思える訳です。
現在学生になってくれてる人たちには、なるべく回り道をせずに中核を体得してもらいたいと思っていますので、これらを重視して階梯を設定できたらと思っています。
それらの套路と兵器の一つ二つを元に、武気功などを得て行けば、これは良いことでしょう。