前の書き込みで、コメント欄にスパムを貼ってゆく団体の人が居ると言うことを書きましたが、いまの日本フィリピン武術業界では、そのような行動がなんというか、粗い人が非常にわらわらとうごめいている印象があります。
先日耳に入った噂では、ある伝統流派の支部として活動していた団体が実はその団体とはまったく関係の無いところだったそうで、詐称が判明して大変なことになったと聞きました。
名前を活用された団体も、詐称していた団体に通っていた生徒さんも可哀そうです。
そのようなインチキが非常に多い。
かくいううちにも、かつてそのような輩が近づいてきて知らない間に勝手に生徒を募集し始めて活動をしたことがありました。
その時の状況はこちらに書いてあります。
https://ameblo.jp/southmartialartsclub/entry-12295317033.html
この件があったとき、周りの避難に対して、彼も事態の鎮圧に協力してくれているはずだからしばらく待ってくれと言い、本人が責任を取って対応するように厳重注意をしたのですが、こちらが要請してもいないのに勝手にこちらの名前を持ち出してパフォーマンスのような声明活動をしてごまかし、自分から日切りを決めてその日までにどうにかすると連絡をしたまま対応が無く、こちらから催促をすると「いま専門家に相談している。法的に通用する物の方がそちらもいいのでは?」と傲慢な態度に出たまま、さらに音信不通となりました。
うちに来ている間にも、職を転々としていたようで、おそらくはそのようにして不正を働いてはあらゆるところから逃げ回って生きてきた人間なのであろうと思われます。
まぁもし私だとしたら、会社の名前を使って詐欺を働きまわっているような人間はいくら人手不足のご時世とは言え雇いませんね。こちらの信頼はおかげで大きく揺らいでしまったように思っており、騙された人たちに申し訳ない気持ちでいっぱいです。
そのようなインチキな人間の話は他でも聞きます。
私の知っている人間でも、少し齧っただけでさも出来るかのように教えはじめてよそのセミナーやユーチューブで教えた物でお金をとっている人間がいます。
また、ある人は自分の行動範囲にジムが出来たので入会費、年会費、用具費を納めて入ったのですが、すぐにそこは閉鎖となり、ろくに練習もしていないにお金だけ無くなったと言います。
これらの、本物が安定した環境で学びづらいという傾向は、フィリピン武術に非常に顕著な物です。
恐らく、日本でカラテが普及してきた経緯でも同様のことであったと思われます。
伝統空手などまったくやっていない人間が自己流で試合に出て勝手に道場を開いたり、次々と本で覚えた技を元に型を創作したり、果てはただのキックボクサーが道着を羽織って空手のクラスを指導したりするというのは当たり前のことになっています。
これは空手がもともと正当な伝統武術ではなくて、創作武道であり、またスポーツとしての発展が重視されていたことに由来するのではないかと想定しています。
もともと確固たる土台が無いので、それぞれの人が自分なりのカラテ感で自分のカラテを自称する。
これカラテ界を牽引したカリスマ武道家が、ムエタイもテコンドもブルース・リーも、打撃系格闘技はみんな「カラテ」だというカラテ観で普及活動をしていたことともつながっているのでしょう。
その土台には、アメリカにおけるアメリカン・カラテの創作の歴史があるように思われます。
件のカラテ家もブルース・リーも草創期のアメリカン・カラテ界に大きな影響を受けた経歴があります。迷彩服や忍者風の空手着姿でヌンチャクを振り回すような連中です。
その流れが逆輸入をした結果が、いまの日本の空手界の状況と無縁だとは思われません。
伝統空手の何流でもないカラテの先生に「あなたは何を根拠にそのようなことをしているのだ?」と問えば「うちの先生もやってたから」というのが答えであることでしょう。
その先生に同じ質問をしてもそうでしょう。
これはそのまま、琉球王国にまで辿れます。そしてそこで、「なぜあなたは中国拳法を正しく学んで伝人となったのだとしたら、その流派名を名乗らないのか」というところに行きつくことであろうかと思われます。
ちなみにこの答えを私は、伝統流派の長老から直接聞いたことがありますがここでは書かないでおきます。今回は現行のフィリピン武術の前例として出しただけだからです。
いまの日本フィリピン武術の世界は、本物を触ったこともない、あるいはセミナーに何度か参加した程度の先生が沢山いるように思います。
この傾向また、実はアメリカに由来します。
伝統フィリピン武術、およびその後の決闘フィリピン武術の時代を生きたレミー・プレサス先生という方が、それらをベースに「モダン・アーニス」という流儀を設立します。
このレミー先生の流派が現在日本に持ち込まれている多くのフィリピン武術のおおもとになっているのですが、レミー先生、早い段階でアメリカに移住し、以後終生フィリピンに戻ることなく、アメリカでのセミナー活動で時流を普及させていました。
そのため、カラテと同じくセミナーに参加したりビデオを観たりしただけでセンセイになってしまうアメリカの風土を経て、モダン・アーニスの先生というのが沢山あふれたのです。
おそらく、私が二十歳の時にセントルイスの片田舎で初めてカリを習ったときの先生もこの類であったかと思われます。
そう、ポイントはこの「カリ」という言葉です。
カリというのはアメリカだけでの言い方で、そもそもフィリピンでは誰もそんなことを言っていませんでした。
しかし、レミー先生はアメリカでの普及活動において、モダン・アーニスを「カリ」と称することをためらわなかったのです。
彼の武術はカテゴライズとして「カリ・アーニス・エスクリマ」と表記されています。
カリはアメリカ語、アーニスはフィリピン語、エスクリマはスペイン語である、というのは現在でのフィリピンでのニュアンスとしてあるのですが、その始まりにはこのモダン・アーニスの存在がありました。
レミー先生の活動おいて、カリはアーニスと繋がったのです。
そのために、世界中にあふれた自称フィリピン武術の先生たちに対して、現在フィリピンが取っている政策が、国営の団体「アーニス・フィリピネス」による統一活動です。
もちろんそんなことは現実不可能であるのは間違いないのですが、 それでもかつての日本の武徳会のように世界中にあふれた自己流先生方を審査し、実力やキャリア、指導歴や年齢などで段位を認定、公式なアーニス・マスターとして身元を洗ってゆこうという活動をしています。
もちろん、団体に認定されるには会員となり、ライセンスの発行費用を払わなければなりません。
ただ、少なくともDVDで見ただけであったり、指導を受けた先生が不明な場合などはしっかりとした認定をされることはないはずです。
よって、ある程度ここで国の認定を受けた人から教われば、うさんくさい人からよくわからない適当を習ってお金を取られた、ということは避けられます。
経費や時間、労力と情熱の浪費はもったいない。
そしてそのためにフィリピン武術がインチキくさくてつまらないものだと思われても良くない。
どうか始めてみるときには、先生の由来にご注意をと老婆心で申し上げます。