フィリピンに追い修行に行くことが決まって支度中の昨今ですが、衝撃の動画に遭遇しました。
https://www.youtube.com/watch?v=e-xTpGNZ0j4
基本的に私は「カリ」とタイトルされた動画は見ません。
なぜなら私が知っているアルニスとはまったく違う物だからです。
しかし、その違いは両方をしっていて現地でやったことのある人にしか伝わらないのだろうと思っていました。
この動画は、その違いを如実に表現しています。
それも、私の知っている場所で。
いいですか、皆さん。これがフィリピンの人が感じている「カリ」そのものです。
現地のみんなが知ってるアルニスでもエスクリマでもない「カリ」です。
大変に驚きました。私がうろついていたケソン・シティでこんなことが……。いや、話には聞いていたのですが。
対して、アルニスというのはこういう感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=mPKbCsWLe4k
これ。これが私の知ってるアルニス。
あんなイケメンや美女のエグゼクティブみたいのがしゃらんとしたことを言いながら上空で楽しむ物とは全然違うというのがお判りいただけるでしょうか?
あの窓の外の景色の下がこれです。
現地では「カリ」というのはアメリカから入ってきたイケてる概念で、もともとのアルニスとは日本における伝統柔術とブラジリアン柔術くらい感じが違う。
フィリピンは貧富の差が大変に激しく、土地の多くがどこの役所も地形を把握していないスラムか違法建築地帯。
その中で、急速な開発が進んで一部のエリアで高層ビルが建てられています。
多くの人は学校にいけないので、公用語だとされているタガログ語や英語は話せません。自分の家族が話す部族の言葉を使います(家族が居れば)。
学がある一部の人は、卒業後、産業の無い現地を離れて外国に就職し、場合によっては外資系企業の社員としてフィリピンに帰ってきます。
その人たちは「カリ」をやります。
現地で出会った「カリ」のインストラクターのプライベート・レッスンは一回1500ペソ。ちなみに一般の家庭の一か月の収入は2000ペソだと言われています。
そして、私のマスタルたちの1レッスンは100から200ペソ。
そう。それを払ってアルニスを学ぶことも、誰にでも気軽には出来ないのです。
マスタルのところにレッスンを受けに行くときは、不法滞在民がバラック村を作っているジャングルの河原を抜けて、銃で武装したパトロール部隊がフェンスで閉鎖している富裕層の住宅街を抜けて、どぶ川沿いのスラムにあるご自宅にまで行きました。
スペイン様式の石造りの迷路のような建物のはざまで、ドブネズミや裸の子供たち、紐で吊るされた洗濯物などに囲まれてバストンを振りました。
トタンでバラックを増築しているので、ちょっと大きく動けばすぐに壁にぶつかってしまうような狭い路地です。
夕方になって練習が終わって帰ろうとスラムを出ると、どぶ川の周りに上半身裸の子供たちが十人以上たまって、バリソン・ナイフを振り回す練習をしていました。
マスタルに守られながらそこを抜けてバス停まで送ってもらいました。
ちなみにそのどぶ川は、現在洪水が起きてあふれ出して、スラムは汚水に覆われています。
これで伝染病が流行るので、毎年問題になっているそうです。地価に直結していることは間違いないでしょう。
もちろんこの汚水が、高層ビルで「カリ」をしているフロアに届くことは決してありません。
スラムと裸の子供たちのナイフとゲリラ戦。それが私のアルニスを作っているものです。