昔の日本にあった切腹の風習は、自らの中に恥じるところがないということを、身体を開いて見せるという考えに始まっているそうです。
この考え方は中国から伝わりました。
唐の時代の反将、安禄山は、玄宗皇帝に「その太鼓腹には何が入っている?」と訊かれて「真心しか入っていません」と答えたそうです。
中国では、人間の感情は内臓から生まれると考えられています。
これにはやはり陰陽があり、心臓からは愛情や喜びが生まれると言われると同時に、残忍さも生まれると言われています。
脾臓からは公正さや寛大さと同時に憂いが。
肺臓からは勇気や正義と共に悲しみが。
腎臓からは穏やかさの半面心配や驚きが生まれます。
そして、肝臓からは優しさと怒りが。
それらの相反する感情が、臓器を巡る気のバランスによって発生すると言うのです。
このようなことを、内臓の徳と言います。
徳とは西洋的なモラルのことではなく、気の働きという意味です。
内臓の力が、上述の感情を働かせるという考え方です。
西洋医学でも、内臓とホルモンの関係は語られているようです。腸内環境によって喜びをつかさどる物質、セロトニンの分泌が変わると言う話もあるようです。
となると、食べ物のことがまず頭に浮かびます。
東洋の考えでもやはりしかり。
漢方薬や薬膳などはこの分野の物ですね。
しかしそれだけではありません。
気功の考えでは体内にはそれぞれの内臓に繋がっていると言われている経絡があり、それを活用させることで効果があるとされています。
各経絡を鍼や温灸で刺激したり、マッサージやストレッチをすることで臓器に効果が出ます。
その効果は必然、感情に繋がってゆくと考えます。
気功や中国武術を行うことが幸せな暮らしを作ると私が言うのは、そのような理由で安定して幸福感のある感情の状態にいることが出来るようになるためです。
ただし上に書いたようにこれは表裏を伴った物。正しい指導の下、適切に行わなければかえって精神を病むことになります。
そのために、自分の情感とは距離を取った純粋な理論の部分を理解しておく必要があります。
言葉だけでも一時の感情だけでもない、総合的な人間性の改善がそこにはあります。