「あなた、疲れそうな顔してるわ」
「え?」
「我慢して諦めて、最善を尽くす。そういうのって疲れない?」
昔読んだ小説の中に、このようなやりとりが出てきたように記憶しています。
なんだか自分に言われたようだったのでとても印象に残りました。
疲れやすく、汗をかきやすく、あまり食べず、気力が出なくて頑張りが効かない。私は典型的な気虚の相があります。
これは、人生を通して、理不尽や暴力にさらされて、限りない悪意を常に浴びせられながら生きてきたことに由来するのではないかと思うところがあります。
おそらくはそこで、そういった周囲の環境が良くないものであり、それでもそれをどうすることも出来ず、ただ受け入れて諦めて最善を尽くして、自分は人には良くしてゆこうと流れに対して踏みとどまってきた結果の消耗であると自分では思っています。
だから私は、誰よりも暴力を内包していても、それを他人には向けないように気を付けないといけない。
悪意と言う物がどのような物かよく理解していて、それを人にはぶつけない。
おそらくそれは、この日本社会においては命を削ってゆく生き方のように感じます。
この、私の考え方と同様の考え方をするものが陰陽思想であり、その考えを具体化した物が気功です。
私の系列の気功の師が、古典から編纂した物に、気内蔵(チネイザン)というものがあります。
これは、五臓に宿る感情が心身に影響を与えているという発想のもとに行われている物で、それを調整するための方法です。
肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓に宿っている憂いや悲しみと言った感情を慰撫して命を安らがせる。
受けた人は、過去の怒りや幼少時の悲しみが突然湧き上がって泣きだしてしまったりすることもあると言います。
そしてその結果、心がとてもすっきりすると。
この方法は世界的にとても評価が高く、そのために一部の富豪を中心に施されてきたものなのですが、タイでは比較的安価にこれが受けられるところが多いのを目にしました。
しかし、一般のタイマッサージと較べると1・5倍から2倍くらいの値段はするので、やはりこちらでも少し上級の物であるという認識であるようです。
こちらで在った人たちにも、チネイザンを受けにきたとか、学びに来たと言う人に何人も出くわしました。
私も来る前にこれを学ぶことを考えたのですが、今回は費用と時間が足りずに優先順位を後回しにするしかありませんでした。
しかし、またこちらに来て、こちらの訓練施設の創業者の先生が私の師公と友達であることが分かったり、NYに居ると思っていた師公がこちらに居ることが分かったりと言った紆余曲折を経た結果、どうやら私もチネイザンを学べることになったようです。
あぁ。
これを持ち帰れば、傷ついた人々の心に文字通り直接手を触れて回復を求めることが出来るかもしれない。