古式ムエタイの流れを引く太拳の中に、非常に印象的な動作があります。
それは、いわゆる橋法の類で、相手の手をかき分けて打ち込んでゆく系統の物なので、蔡李佛では多用をしないタイプの動作のある種ひな形となっているような動きです。
なぜ多用しないのかと言うと、それよりも接触したところから全身の勁でまるごと吹き飛ばしてゆく方が本道だからです。
小手先の技に拘るべきではない。
しかし、小手先の技もまた楽しいところもあります。強大な勁ほど重要でなくても。
また、調練用の武術となるとそこまでの進捗が至っていない人にも用いることが必要となるので、そうなると小手先の橋法なんかも必要性があるということは察することが可能です。
蔡李佛拳は、洪拳を始まりに、蔡家拳、李家拳、佛門掌を編纂して作られたと言われていますが、実際は総合少林拳であって、他にもラマ白鶴拳(侠家拳)などの痕跡も見られています。
泰拳もそのうちの一つです。
それらの拳法の中には、橋法を多用する物もあるので(特に李家拳が代表的です)、そこらから元々技法はいくらでも入り込んでいる物と伺えます。
泰拳もまた、実はその要素が強い。
現代ムエタイだけ見ていると以外だと思われるかもしれませんが、実は拍打という掌で自分の身体を打つような動作がままあり、それらは橋法の物となっております。
蔡李佛のちょっとアドバンス技に千字槌というカテゴリーの物があるのですが、これ、実はその辺りの用法が強い。
そしてこの技、太拳から習い始めました。
洪拳にもある動作であるようなのですが、私は実はこれは泰拳の影響が強い物なのではないかという気がしています。
拍打系なのです。
これを多用するとパシパシ音を立てて連打しながら相手を捕まえて打ってゆく戦法となります。
その過程の中に、相手の腕を打ち壊してゆく破橋法なども含まれる。
そうやって相手との間合いを詰めていってとっ捕まえて肘や膝を叩きこんでから引きずり回すのがこの戦い方なのですが、最初に書いた太拳の中の印象的な動作の中では、一端の止めとして喉への挿槌があります。
これ、蔡李佛では通常技で、まっすぐ突く時の多数派喉にこいつを挿し込んでゆくのですが、これが蔡李佛の看板手形である豹拳で行われます。
拳と指先での突きの中間のような形です。
表看板なのでいままでさほど疑問にも思わなかったのですが、古式ムエタイについて調べているうちに面白いことを見つけました。
もっとも古い古式ムエタイであるムエ・ロッブリーの紹介で、「技はのどぼとけへのアッパーカットと貫き手」と書いてあったのです。
これもまた、泰拳から入ってきた物なのではないかというように思われます。