前回、膝突き腕立て伏せをいくらしても、腕立て伏せが出来るようにはならないと書きました。
もちろん、やっているうちに出来るようになったよという人も居ることでしょう。
その人たちは、元々筋肉がちゃんと付く身体だけれども、たまたまその時期身体が鍛えられていなかったので膝を突いていただけという人達です。
先天的には素質のある組なので、これはすぐに出来るようになって指立てでも片手腕立てでもどんどん出来るようになると思われます。
問題は出来ない組です。
これは、実は構造上できなくても当然なのです。
なぜなら、膝を突いてやる腕立て伏せは上腕の筋肉を作ることは出来ても、体重を支える下半身、およびその力を腕と繋ぐための腰や背中と言う中間部が鍛えられないからです。
ヘコヘコ腕立て伏せはこの中間部をぐにぐに波打たせると言う運動のことです。
その場合、腕はまったく鍛えられていない。
つまり、中間部と腕にはそれぞれ別の鍛え方が必要だ、ということです。
では、どうすれば中間部を鍛えられるか、というと、プランクなどが直接的なのですが、これは辛いことで有名な運動。
もともとそこが強くない人がチャレンジすれば、腰を傷めるという症例も良く聴きます。
そこで私のフリーダム・ボディ・エクササイズがお勧めしたいのが、東洋の伝統身体操法に伝わる考え方です。
それは、筋肉ではなくて腱を鍛える、という物。
もっと言うと、腱を含めた体の中を通る線を鍛えます。
漢方や鍼灸の人体図で、身体の中を経絡という線が走っている絵を見たことがありませんでしょうか。
あのように、東洋では身体の中に力の流れの線があると考えます。
これを鍛えてゆきます。
腕立て伏せで使う線を鍛えるにはどうするかというと、まず壁立て伏せです。
うつ伏せでやっていた腕立て伏せを、90度立てて壁に向かって行います。
まっすぐに腕を伸ばした時に壁に触れる位置に陣取って、そのまま身体を壁に向かって倒してゆく。
そうしたら、ゆっくりと腕を伸ばして身体を基の位置に戻す。
それだけです。
え? それだけ? というほど簡単に感じられるかもしれません。
あれ? やりかた間違えてる? とも。
でも、それで良いのです。
大切なのは、背中をうねらせないことです。
へこへこ腕立て伏せの立体版にならないように、胴体部はまっすぐな状態を維持して壁に向かって斜めってゆき、そして戻ってゆきます。
これによって、地面に対して腕立てをしたときに重力に負けて折れてしまわない背中とお腹を作ります。
回数は10回程度でOKです。
これを、一日3セットほど。
間隔はいくらあけても構いません。
ほとんど負担はないと思いますがそれでOK。
これは、上腕の筋肉ではなくて身体の中の弱い腱などを作っているのです。
これを、間二日ほど開けて繰り返していって下さい。
あまりに簡単に出来て飽きてきたら、壁からの距離を話していって下さい。
だんだんスタート地点での体制が斜めになってゆきます。
慣れたらより角度をつける、を繰り返して行って下さい。
そうしてゆくと、次第に壁よりもテーブルや鉄棒などの方がやりやすくなってくるかと思いますのでそちらに移行しましょう。
それになれてきたら、次の課題は指を使うようにするということです。
掌のどこかで適当に身体を推すのではなくて、指の腹で体重を推すというつながりを意識して行って下さい。
指にはそれぞれ経脈がありますので、力の流れが胴体、内臓に繋がっているとされています。
指の腹に重心を伝えるために、テーブルの端の方を使ったり、鉄棒を四本の指で握るようにしてやっていきます。
これも同じように焦らず、期間を掛けてやっていってみてください。
慣れるごとに角度もきつくしてゆきます。
そうすると、次第に苦しくなってきたときに、お腹がプルプルしてくるのではないでしょうか。
これが、腕立てに使う胴体が鍛えられ始めた感覚です。
この力の使い方をマスターすれば腕立て伏せだけでお腹も締められる人生へが始まったことになります。
指ではもう辛いところまで角度がくれば、指の付け根の部分を使って下さい。これも指の一部です。
これで充分にお腹や腿が苦しくなってきたな、と思った頃、地面に向かって普通の腕立て伏せをしてみてください。
きっと問題なく出来るはずです。