ラジオを聴いていると、曲紹介が後回しで音楽が掛かることがままあります。
そのような形で知らない曲を知り、タイトルやアーティストを覚えることが出来るととても嬉しい。
このところ、FMでまま掛かる楽曲群のうちに、ちょっとフックするものらがあります。
ブラック・ミュージック好きからすると「お、いいトラック」となるのですが、そこから続くラップに耳を傾けているうちにだんだん小首もかしげられてきます。
というのも、どうもこれが釈然としない感じがあるのです。
パッと聴き、面白そうな声質に感じる。
ものすごく難しい発生をするりとこなしていたりもする。
でも、どうもこれが、ラッパーというよりはラッパーの演技をしている人のような風に聞こえるのです。
いわば偽物です。
まぁアイドル・ラップのような物もありますし、あるいは自分でリリックを書いていないフィメール・ラッパーが物議をかもしたりもしたことがありますので、その類なのかなという気がしてきます。
ヒップホップというのは、自分の内側から出てくることをそのままに、自分の言葉で語ることが許されたジャンルです。
そのために、素人芸であるとか自分のことばかり話していてキモいなどと揶揄されてきました。
しかし、そこにある血肉の通った物に私たちは胸打たれてまいりました。
このたび耳に引っかかった曲たちにはそれが無い。
実に人工的で技巧的です。
後から知ったのですが、これはアニメのタイアップか何かの企画で声優さんがラップをしているのだということでした。
あぁ。なるほど。
オタク文脈の物であるのなら、それは精巧なイミテーションであるはずです。
それは本物ではない。
本物ではない物を、いかに新しい技巧を持って表現するかと言うのがそちらの世界のスキルなのでしょう。
私も子供の頃は、新しいアニメーションを見るたびに、そんな表現もあるの? こんな風にも見せられるの? と新鮮さに驚いていました。
いずれはAIでこのような物はいくらでも量産できるようになるのかもしれません。
そしてその時にこそ、本物の生き方のこもった物が再評価され、それを通して人の生き方、命、魂のような物の価値に世の中の再評価が向けられるのではないでしょうか。