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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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不要不急の週末

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 多くの著名な方々が、感染したというニュースが入ってきています。

 歌手のP!NKさんも感染し、ワクチンの開発に一億ドルを募金したとのことです。

 現在、我々が状態に対してできることは本当に少ない。

 大変にもどかしいことです。

 募金することが真っ先に思いつきますが、上記のようにすでに多くの機関には多額の資金が世界中から入っています。

 しかし、だからといって開発速度が増すということではないはずです。

 ただ、不要不急の外出を控えるという受動的なことだけが数少ない可能な努力なのだと考えると、本当に医療に従事していない我々は無力なのだと思わされます。

 せめて買い占めなど状況を悪化させることを避けて、人々の心を楽しませるべくライヴ放送をしている人たちを支援したり、その活動をシェアしたりすると言ったような副次的なことに意識を向けてゆくほかないのかもしれません。

 そのようなことを考えていた中で、ラジオのいくつかの番組から、外出している人の低下もあって輸血用の血液が非常に不足しているとの呼びかけを耳にしました。

 ポール・ウェイド先生の身体理論によると、体内の栄養や免疫は血液の循環によって成り立っています。これは東洋医学の気血循環の視点からも同様でしょう。

 なので、いま血液を失うことは非常に危険なことになります。

 また、そのためにわざわざ外出することは独りよがりの愚かしい行為で、不要不急であるのではないかという思いもありました。

 さんざん迷いました。

 しかし、結局週末の朝、献血に向かうことを決めました。

 多量に血液を失うと抗体が落ちるというのは量を少なめにすれば行けるのではないか。

 うちから比較的近いところに献血センターがあり、人の多い都心部を経由することなく、途中で誰にも接することなくバイクで向かうことが可能である、というのが判断の理由になりました。

 また、食料の調達のために一度は家から出ないといけないため、その折に寄るという形なら、不要不急性を最低限に抑えられるかもしれないとも思いました。

 最後に、これは私の外出自粛にとっては不要不急であるかもしれませんが、いま血液が足りない人にとってはそうではないのではないかということも考えました。

 かくして向かったセンターなのですが、存外に人がいました。

 これは、下手すると三密なのでは……といささか怯みました。

 かえって世の中に悪いことをしてしまいかねないような……。

 しかし、受付の方はノリノリで、書類片手にヒヤリングをしてくれます。

 恥ずかしい話ですが、私はこれまで献血をしたことがありません。

 自分が受けたこともないし、献血をした後は運動をしてはいけないというので、休みなく働きがちな武術講師の私としては、中々機会がなかったのです。

 未経験なので少な目の200ミリでお願いします……と量を選択しようとしたらすかさず「いまね、献血してくれる人が少ないから。たくさんほしいの。400でいいわね?」とベテランの勢いで押し切られてしまいました。

 また恥ずかしい話なのですが、私はあまり注射が得意ではありません。

 それでも、二年前の血栓の時に定期的に血液検査で抜かれたし、膝が腫れ続けていたので週に二回ほど水を抜いていました。

 だから少しは慣れたと自分に言い聞かせていたのですが、いや400って何?

 いま手元にある飲み終わったペットボトルの内容量が430ミリ……。

 これだけの血が体からなくなるのか……。

 体重減るんだな。

 いや、そういうことじゃない。

 それだけの免疫や栄養循環が落ちる訳だ。

 土俗信仰的な恐怖感があります。

 さらに女性は、以下のような書類を出しました。

 写真の説明はありません。

 おおう。

 日本だと、まだゲイはプラトニックじゃないと献血させてもらえないのか。

 あと、よく読むと5番目に関しては把握が出来なくない?

 まぁ、さすがにこれだけで最終段階まで持ってくわけじゃなくて途中で血液は検査されるんだろうけども。

 結構条件は厳しくて、特定の国に半月以内に行っていたら駄目など、たくさんの条件がありました。

 さらに、同じチェックを受付をクリアした後に待っている、医師との面談でも受けることになります。

 そののち、血液型の確認という物を受けることになります。

 軽く血を抜いてそれを薬剤につけるという物で、って、400の前に一回取るの!?

 完全にさっきのペットボトルからこぼれるじゃないか。あ、想像したら気分が悪くなってきそう。

 そう。自分が馬鹿やって怪我して流してる最中とかは平気なんだけど、こういう状態の血液が苦手みたいなんです。

 容赦なく、スタート前の一本が抜かれます。

 さらにその血液を目の前で薬剤に落として「あ、こっちのが固まってますでしょ? こっちの血液型ってことで間違いなさそうですね」とにこやかに言う検査官の女性。

 うぅ。

 気持ち悪い。

 これが終わると、ペットボトルのスポーツドリンクを、半分以上飲むようにと渡されます。

 水分不足になるから、ということなんですが、そうだよな、このペット一本分……。

「お昼は食べましたか?」と訊かれたのだけど、ちょっと前に朝ご飯を食べたばかりなのでまだだと答えると、ビスケットを渡されて、抜く前に迅速に食べるよう促されます。

 どれだけ弱っちまうんだ私は。

 普段甘い飲み物をあまり飲まないしビスケットはまず自分では買わない私、甘い&甘いに動揺しながらもどうにかミッションクリア。

 粛々と歯医者さんの椅子のようなところに運ばれて、とうとう本番になりました。

 担当の女性が「脅かすわけじゃないんですけど、献血の注射は太いんでちょっとチクッとしますよ」と教えてくれました。

 しかし、こちらで勤務されてる方はさすがに専門家。お医者の看護師さんたちより注射がうまいのか言うほど痛くはありませんでした。

 所要時間およそ十分。

 終わってから、健康チェックとして血圧を測ってもらいました。

 普段使っているのとは違う、手首のところで測るタイプなんですが、最高150の100が出てしまう私の血圧が120の90くらいに。

 抜いたからですか? と聞くと看護師さんは、そうではないとのこと。

 どうやら、意図的に瞑想状態に入ってやりすごしていたせいみたいだ。

 その後、特に立ち眩みもなく、アイスクリームをもらって食べてから帰るよう言われました。

 このアイスがハーゲンダッツだったのは、単においしいからじゃなくて柔らかくなるのに時間がかかるから、献血後30分ほど休むようにという推奨を実行させるためのエサだと見た。

 ストロベリー味を食べました。

 その後も特に問題なくバイクに搭乗、近所のスーパーに寄って帰宅。

 なんか少し眠かったので、明るいうちから横になって「少林寺への道」と「トム・ヤム・クン!」のDVDを観ながら夜まで過ごしました。

 これでもし、感染を広めるようなことになっていたらどうしようと最後まで心は晴れなかったのですが、医師の友人から「あんた、いい人だ」と骨太な言葉を受けて涙が出そうになりました。

 コロナに関係なく、必ずどこかで輸血を必要としている人はいるはずだから、と教えてもらい、もしかしたら愚行だったかもしれないけれども、よかった面はあるんだと思えました。

 献血した血液は、翌日にはもう使用されるのだそうです。

 それくらい、緊急性が高い。

 これはもう、自粛期間中毎週行ってやりたいと思うのですが、一度やると二か月間隔をあけなければならないそうです。

 以上が、私がこの週末にしたことです。


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