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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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包丁とマイク 2

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 前回書いたすごい向学の士とは、齢50を超えるベテランの声優さんです。

 この方、大変に物腰の紳士的な、知性が感じられて、かつ気遣いの欠けない素晴らしく素敵な語り口の方で、アニメを観ない私でもすぐに人となりを知りたくなりました。

 そのお人柄を象徴するのが、尊敬する人は? と訊かれて、先輩の富山敬さんですと応えていた時のエピソードです。

 富山敬さんというのは、私の歳で言うならタイムボカンシリーズのナレーションの方です。

 その富山さんと義理の親子の役をやっていたそうなのですが、仕事場で常に富山さんは物静かに台本を読み込んでおり、無駄話は一切しなかったと言います。

 それに接していて、大変尊敬したというのだから、この方もまた同じよに静かな品の良さを感じさせてくれました。

 その方、元々は声優業に興味は無くて、バイト先の友達かなんかがオーディションを受けるのについてったらそのまま受かってしまったそうです。

 その後、すぐに役が付いて人気者となるのですが、元々自分が演技の仕方も何も学んでいないことに気が付いて、キャリアの半ばから自分で色々と試して勉強を開始したのだそうです。

 それと並行して、発音や口の使い方に得るところがあったのか、英語の勉強をしていたそうです。

 それが高じて英検一級を取得したのをきっかけに、もっと勉強がしたいと思って、四十過ぎてから大学進学を考え始めます。

 進学先を検討した結果、就職などの特定の目的を持たずに勉強をするには、そこの制度が一番良い、ということで東大を目指します。

 そしてこの方は、本当に入学し、仕事を優先しながら学生生活を長く自分のペースで取ってゆき、この三月に53歳で卒業をされたそうです。

 すべての理由は「勉強が好きだから」。

 法学部を卒業されたそうですが、だからと言って別に法曹界で仕事をする気もなく、声優を続けてゆきたいのだと言います。

 本当に、素晴らしい生き方です。

 このような方の生き方こそが「求道」という物なのでしょう。


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