外出自粛のゴールデン・ウィーク、私は相変わらず、記事を書き、書見で学び、フレンズやワイルド・スピードのDVDを流して英語に耳を慣らしたりして過ごしています。
午後になると近所のスーパーに買い出しに行くのですが、その時に通る山中にある公園や沼辺に人が居なければそこで気功をし、練功を少しして、撮影をしたりします。
最近知ったのですが、公園での散策は強いて自粛対策にはなっていないのですね。
代々木公園などの大きな公園は、人が集まってしまうということで閉鎖されたりしているそうですが、もう少し小規模の公園の場合は健康対策のために散歩やジョギングをすることが否定はされていないようですね。
私もそのあたりの機微が分からなかったので参考にさせていただきました。
ロックダウン下のイギリスでも一日一回の運動目的の外出は良しとされているようですし。
もちろん、不要不急の外出をしないのがベストなのは間違いありません。
しかし、その結果不健康になるのでしたら、それも本末転倒。そこらへんの兼ね合いのガイドラインが知りたかったのです。
当然、これは未曽有の事態なので誰にも正確な基準は見いだせない状態なのですが、とりあえず現状、健康管理のための行動は危険性が高いと言うことになるまで、最小限程度やらせていただきたいと思います。
もちろん、ガレージや庭先、室内で出来ることはそちらでやっております。
そんな中でね、わたくし、皆さんの体力造りに役立ちまいかとトレーニング動画を作っていたりします。
もう、世の中にはプロのフィットネス・トレーナーや筋肉系ユーチューバーという人が山のようにおりますので、いまさら私がのこのこ出てゆく必要も無いのですが、そこで出てくるのがこの概念【フリーダム・ボディ・エクササイズ】です。
私は西洋的ジムなスティックの理論によるアスリートではなくて、あくまで東洋系伝統身体操法の継承者。仏教体育の研究者です。
気功師であり、伝統中国武術の師父で、仏教ヨガのグル(これは恥ずかしいくらい未熟なので肩書だけ)と言うことで、東洋医学の考え方で身体を観ています。
これは単に、整体的なケアに関してではなくて、体、生命力、気と言った人体の根本構造の観方に関してですね。
そう言った視点から、体の作り方、養い方をご紹介している訳です。
私はこのような物をフリーダム・ボディ・エクササイズと通称して一般向けに公開しているのですが、これは仏教の考え方である体の行を通して生命の自由に至ろう、とう考えを主体としたものだからです。
その中で、自分自身も現状行っている練功の動画をアップいたしました。
これは、ほかの人にやってみてね、というカテゴリーの物ではなく、気功や中国武術の身体づくりでこういうのをしますよ、という紹介動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=9oCBNPLdjdk
これ、いわゆるアンイーヴン・プルアップという運動です。変形の懸垂ですね。
ただ、私のは体操式のとはちょっと中身が違うのです。
なんというか、豚の丸焼きのようなみっともない姿勢でぶら下がっていますが、こんな芸術点が悪い体操は無い。
ご説明いたしますと、体の内側を通る力の流れ、これ経絡と言い、そこを私たちは勁と言う力を徹して運動をしているのですが、この上下する焼き豚はそうやってうごめいています。
フィットネス的に言うなら、これは上腕二頭筋を大変活用して発達させるのですが、そういう筋肉には集中させていないのです。
身体の中の力のつながりで行います。
これの中心となるのが、下腹部のいわゆる下丹田です。やると腹筋に効きます。
この、下丹田から鉄線勁という物で手につなげています。
手は、鷹爪功と言われる練功で作られていて、やはり勁を発しています。
この勁というつながりは手から肘、肩という骨を避けて脇腹に繋がって下丹田に繋がっています。
これを、弓の弦のように引きます。あるいは張ります。
それによって、勢いをつけづにウィンチで巻き上げるようにして重心を引き上げています。
これ、陰陽思想の相対性で見るとつまり、相手を自分の方に引き寄せる動作と同じですね。
また、丹田の力を指先に伝えて、ゆっくりとじわじわ長きにわたって継続的に用いてもいる訳です。
そんな風にして相手を引き寄せてどうするんだ。レスリングでもするのか? という疑問を持つ格闘技好きの方も居るかもしれません。
そうしたければそれでも良いです。
相手の後頭部の髪を掴んで、自分の下腹の方に引き込んで鼻面に膝を叩き込む。このみっともない運動の形はまさにその時の姿勢そのものですね。
でも私なら、そうは考えません。
この姿勢、足が下ではなく前に向けられている姿勢は、下半身を軸として見れば腕を上から下に降ろす動作です。
そのようにして相手を打つ手法を、一般的な中国武術では劈と呼ぶことが多いようです。
劈の意味は刀で切る。
私たちの門では上から下に打つことは劈ではなくカプと言います。
意味は印を押すという意味です。
中国の史劇映画なんかに出てくる、重たげな印璽をドスンと押すという意味です。
劈、あるいはカプのように上から下に相手を打つ時、使われる力はなんでしょうか?
遠心力? 速度? 腕の重さ? それから?
私たちは、この力を使います。
私のいまの体重は、83キロと少し。
ダイエットに成功しない限り、この重量、つまり位置エネルギーは常に私の体内に蓄えられています。
その重さを、ひょいと相手の頭部に乗せる。これがこの勁を用いたカプです。
出会い頭に、突然頭部に83キロを乗せられたら、頸椎はどうなるでしょうか?
振り回す力は必要ありません。
ただ触れて、自分の全体重を片掌の接点でじわじわ引き上げる機能を発動させるだけでいい。
相手の頭部からそれを支える頸椎に、83キロの荷重とそれを引き上げる力がかかります。
勢いをつける必要はありません。ノーモーション。それでも軽く見積もっても100キロ程度です。
これ、中国武術の長勁という割といい力の出し方なのです。
この動画を見てくれた友人が、ツイッターでリツイートしてくれましてね。
そこに「このクラスの先生に習える人は幸いだ」ってコメントを付けてくれましてね。
面映ゆいながらとてもうれしかったです。
この友人は、もう何十年も、台湾の一流門派の先生のところに行っては住み込み修行をしていた人でしてね。
本当に、中国武術というものの真正面のところをきちんと見てきた人なのです。
そういう人がね、私がほかにいくつも上げている武術の動きを見せる動画ではなくてですね、こういう単なる体操みたいな動画に目を付けたところがやはり流石の見識だなあと思うのです。
正当な武館に初心者が入りますとね、まぁ数か月もすればいろんな套路やパンチにキックの練習なんかを教えてもらえます。
大変にかっこよろしいし、何かをしている気持ちになれます。
でもね、本当に先生に認められて、本気の生徒なんだと思われると、指導されるのは、そういう練習ではないんです。
外見の動きではなくて、中身。内側で働く力のことを教えてもらえて鍛えてもらえるんですね。
そうやって、本当のことを教えてもらえるようになるんです。
だから、見た目は同じ、何気ない動作でも本当のことをやっている人間と、ただの素人力の人間では全然違う。
お客さん扱いの会員さんは、素人力のままいろんな華麗な動作を教えてもらいます。
選ばれた者は、ひたすら単調で見た目は変わらない基本の動作だけを繰り返します。
下手をすると「お客さん」に馬鹿にされたりします。
私も経験があります。
お客さんが華麗な動作の練習をしている間に、端の方で一人、延々基本の基本だけを練習しているときに「いつまで経ってもそんなことやってんのかよ」と笑われました。
実際には、お客さんたちがやっている動作はもう一回りしていて、基本の基本の中身を、微細で濃密に練っておりました。
そういうことがね、この友人にはちゃんとわかっている。
だから、動画を見ただけでも真似ができてしまうような動きの部分には関心を示さない。
それよりもこういうことを見抜くわけです。
そして「このクラス」と表現してくれる。
これが分かってるということはですね、自分の生徒さんにちゃんとその中身の部分の指導ができるということです。
外形の練習だけで先生になってしまった人からは、この部分は教わることができない。
人間と同じ。
中身が大切です。
そしてそれを学ぶことができるからこそ、身体の行を通して精神の自由に至るという仏教のコンセプトとなるわけです。