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西洋海賊たちの闘争 6・カリブの落日

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 海賊への投資を辞め、代わりに英国が打ち出したのが貿易でした。

 彼らは航海法という、貿易の独占のための法律を打ち立ててゆきます。

 これは英国の領地においては外国船の貿易を禁じるという物です。

 このため、日本の出島にまで勢力を伸ばしていたオランダは世界レベルでの貿易から締め出されてゆくことになります。

 この頃になると、海賊たちは貿易を妨げる邪魔ものになってきます。

 これには、海賊の役割であった英国のスペインへの攻撃が根本的に不必要になっていたという背景があります。

 というのも、当時のスペイン当主であったカルロス二世、ここでも以前に取り上げた人です。あの、ハプスブルクに伝わる近親交配の因習によって大規模な障害を持ったあごのヒトです。

 知的障害があり、また生殖能力もなかったと言われており、死後、スペイン王家は後継者を外から招かねばならなくなります。

 となると、遺言に則ることになるのですが、そこにはフランスに王位を渡してブルボン王朝に任せよとありました。

 こうなると、黙っていないのがカルロス二世の直系であるオーストリアのハプスブルク家です。

 もし、フランスがスペインを統合すればブルボン王朝が世界最大の王国を所有します。

 オーストリアのハプスブルクはイギリス、オランダと手を組んで戦争に出ます。これがスペイン継承戦争です。

 この戦争においてハプスブルク側は大勝利し、これをきっかけにイギリス、オランダは繁栄を遂げます。

 ハプスブルクはローマ帝国の後継であることを背景にしている通り、当然カトリックです。

 しかし、すでにこの頃には純粋に利益による同盟がまかり通ったため、海域抗争における宗教性は薄れていました。 

 また、この戦争と並行して北米ではイギリスとフランス間で戦争が起きます。

 この戦争によって、イギリスはカリブ海での制海権を確保します。

 海賊は不必要どころか有害になってゆくのです。

 海上での優位を勝ち取った英国は、中南米における奴隷貿易の独占権を獲得します。

 もともとは、この海域における奴隷売買は海賊による密輸で行われていました。

 公式な権利を買い取ったことで、輸送者としての役割も海賊には無くなります。

 こうして宗教闘争の尖兵としても、密貿易の出先機関としても無用になった海賊に対して、英国は海賊取締法を制定します。

 それが1721年。それから40年後に産業革命が起きます。

 これにより、大英帝国は経済的な大成功を迎えることになります。

 すでに時代は、海賊を取り残して先に進んでいたのでした。

 産業革命、プロテスタント資本主義の台頭、二度に渡る世界大戦と世界は大きなパラダイム・シフトを迎えてゆき、海賊は忘れられた存在となってゆきました。

 ここからの時代は、資本主義が自分たちの作ったルールの上で世界へと着実に侵略の手を広げてゆき、そしてそれが今に至っています。

 

 

                                                                            終わり


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