前の記事でも触れた五臓の勁、武術に関するここでの記事にはちょくちょく出てくるうちの身体操法の要素ですが、これは恐らく、ほとんどの日本の武術界では意識されていない物だと思います。
というのも、日本ではどうしても筋肉や骨格と言う物、および精神論が幅を利かせていて、養生や気功の概念が希薄なので内臓について想定がされていないということでしょう。
中国武術では本質的に仏教や道教の身体観がそのまま持ち込まれているので、その辺りの生活概念から入らないと分からないところがあります。
とはいえ、中国武術をしている日本人が全員この部分を理解しているかと言うとそうではない理由は前の記事に書いた通り。
私がこれを学ぶことが出来た理由は、気功の大師である謝明徳大師の存在のおかげでした。
大師は中国武術に用いる勁を膜に宿るものだとしています。
その膜には内臓の膜が含まれるので、そこからこの勁の運用における臓器の存在と言う話に繋がってゆくわけです。
臓器と言うのは感情を促すホルモンの分泌などもしており、人間の在り方に極めて重要な物となっています。
これは逆に言うと、精神の安定や人格の向上を求める気功の行によって臓器の練功がなされ、それによって武術の功も付き従って上がることになる、という構図があるということでもあります。
だから、私が他の門の武術家たちと中華料理の食べ放題になど行ったときに、私だけが延々臓物料理を注文し続けることになります。
これは、私がお酒を頼まないから、というのもあるのですが、やはり日常的に臓器が疲労していて新陳代謝を必要としているからです。
前の記事にも書いた同物同治のために、なんでも好きに選んでいくらでも食べられる、という状況になると私は身体が欲している臓器ばかりを摂取することになるのです。
しまいには、中華系の若いウェイトレスさんから片言の日本語で「ソレ、ミンナ同ジ」と言われてしまったことさえあります。
いいんです、同じで、調理法が違うだけで素材は同じで。
私には健全な武術の身体を向上させるためにそのパーツが必要なのです。
これを思わせる諺が中国にはあります。
「兵は肉を食べ、将は内臓を食べる」と言う物です。
中国で兵と言えばまずは徴発された食い詰め農民です。
職業軍人的な人たちは将となる。
日常的に訓練を積んで生きてきている彼等には、やはり臓器が必要だったのでしょう。
これは逆に言うと、よくわからずに中国武術をしていたりその真似事をしていたりすると、内臓を悪くすることがありえるということだとも言えます。
偏差と言うと一般には神経に出た症状がフィーチャーされますが、その根本には神経伝達物質を司っている臓器の不具合が絡んでいるかもしれません。
よって、本当に深く、高いところまで得たいと思うのならば、必ず正しい方法を取った方が安全です。
私自身も、この練功の具合がちょっと過剰になると疲労が強く出ます。
こないだの献血で急にGTPが上がったのは、同門の友人が言うには「翆虎さんはお酒を飲まないなら疲労のせいでしょう。肝臓はあるコールと疲労です」とのことですので、やはり夏の疲れと練功が重なったからだと思われます。
よくわからないまま腎臓や膵臓に悪い症状が出る様なことがある方は、ぜひぜひに根本からの見直しが必要かもしれません。