今日、あるお姉さんが訊いてきた。
「居合抜きとかもやったことあるんですか?」
正確に言うと居合。あるいは抜きつけ。かなあ?
ありますよ。と答えると、やってみたいとのこと。...
あれは着付けも覚えるし所作も入るし、日本文化を身に着けるためにもとても良いですよと言うと、刀にも興味があるそうな。...
なんだか、最近そういう女性が増えているそう。
私が昔居た団体も、今じゃ女性が沢山で人気だそうだと言うと、教えられるか? と訊いてくる。
私も昔はそこで幹部って言われてて、剣術はうーん、基本のまねごと程度なら、まあ?
ただ、刀がどうも鋭くて怖くて苦手だと付け加えるのを忘れない。
ちなみに、私の居たところの連中は刃の付いてない居合刀でも物を斬れる。充分に刀と言う道具を使いこなせると、刃筋が立っていて振れていれば野菜や吊るし紙が切れる。
長年剣をやってる先生でも、経験が無いと意外にこれは出来ないそうだ。
幹部クラスだと、それで青竹を重ねて切ったり畳を切ったりするから、新建じゃなくても絶対に女の人だらけのところでなんか練習したくない。
それを言うとるろうに剣心の逆刃刀は意味ないですねと言われた。両刃になって危険度倍増だ。
あの刀の切れるとこがいいんじゃないか。あれが持ちたくてみんなやるんじゃないのかと、他の人達も入ってくる。
そりゃそうだ。確かに、美術品としての美しさはピカピカしててあると思うし、工芸品としての価値も大変高いと思うけれども、あの光る物が人間の身体に入り込んでくるんだと思うとぞっとする。
とにかく刃物が怖くて。あんなんで切るってのはすごく残酷だと思う。刃物が肉に入ってくると冷たくて、すごく非情な感じがあるのがまた嫌だ。
だから教えてない。それができれば、海外でかなり生活しやすくなると思うのだけれども。
私がそんなに嫌だ嫌だ言うのは初めて聞いたとみんなが驚いた。
確かに私は普段、あれが嫌だそれが嫌いだと愚痴や文句は言ったことがない。
「前世でなんかあったんでしょうねえ」と一人が物騒なことを言う。
前世じゃない。バリバリ今世だ。
前職で刃物を振り回すような連中と渡り合って、私の身体はあちこち刀傷の跡だらけだ。
あんなのちっともよかぁない。
その後も大工やった時は電気でブンブン回転して木材やら金属やらぶった切るような刃物が体から数センチのとこにあってちょいちょい掠めたり当たったりしてたから、まぁヒヤヒヤしていたもんだ。
そんなこんなだから剣術を指導しないでカンフーに専念してるんだけど、結局こっちでも刀はあって槍もあって、やっぱり鋭器からは離れられない。
元々は刃物が好きじゃないから専門の研究兵器に傘を選んだせいで、他にも扇子やら笛やら、私は色物兵器の専門になってしまった。
そしたらそれだけにとどまらず、結局兵器全般の専門扱いにもなっちゃって、その中でも双刀を使ってるときが私は一番輝いているともっぱら評判だ。刀が同時に二つに増えてしまった。
フィリピン武術でも、ダガ(ダガー。ナイフのこと)が苦手だ。
昔から、ナイフマニアとかミリタリー・カルチャー・オタクがナイフ術を教えてくれってよく来たけど、全然気持ちがわからない
。あんなんで刺したり刺されたり、嫌な思い出しか私はないけどなあ。
フィリピンだったらエスクリドが一番好きだ。棒で相手をからめとったりひっくり返したりする戦い方。
ぬいぐるみで悪い奴をそっと包み込む武術とかがあればいいんだけどなあ