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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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東洋の身体哲学大要私論 6・カーリー女神

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 ハタ・ヨーガとは一体なんでしょうか。

 それは一言で言うなら、クンダリニー上昇を目的としたものである、ということであるそうです。

 これはどういうことか。

 丹田、ないし会陰部にある性的エネルギーを脳にあげて脳の活性化を促す、という物です。

 これは、私たちの気功では環精補脳法と言います。

 行としては小周天言います。

 まったく同じことなので、ハタ・ヨーガから来た物だと見て間違いはないでしょう。

 この、下半身にある性のエネルギー、これは男性なら精巣、女性なら卵巣にあると言います。

 この原始的な生命エネルギーは液体に象徴されて、精と呼ばれます。

 脳の高みにあるエネルギーは、思考のエネルギーです。

 つまり、現代医学で言うなら電気ですね。これを神と言います。

 気功では、エネルギーの内、重い物が下に沈んで陰の気となり、軽い物が上に昇って陽の気となったと言う基本の考えがあります。

 人体の中で言えば、まさにこの物質的な重い液体のエネルギーである精と、物理的な重さを持たない電気の神がその頂点にあるように受け取れます。

 この二つを環精補脳法で融合することで、精と神が合わさって精神となる訳です。

 そのためのルートを拓く行が小周天であり、ハタ・ヨーガです。

 インドでは、この修行をまた故事として相伝しているそうです。

 以前にもそのお話の一つを、かぐや姫の物語のルーツとして紹介しましたので、今回は別バージョンでご紹介しましょう。

 一対となっている、最高神とそのシャクティ、シヴァ神のパートナーはパールヴァティ女神です。

 この女神には、怒りの化身としてカーリー女神と言う姿があります。

 インド・ネパール料理店で見たことがある人も多いかもしれません。

 有名な似姿は、複数ある手に武器や生首を持ち、舌を垂らしてシヴァ神を踏んでいる姿です。

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 これにまつわる物語が実は秘伝の教えなのです。

 シヴァ神が統治をする時代、世界に外敵による危機が起こると、当然破壊神であり、武術の開祖であるシヴァ神が最高指揮官として臨みます。

 しかし、それでも勝てない危機と言うのが起こるのですね。

 その時に実装されるのがカーリー女神です。

 二人は一対となって破壊神の役割を象徴しています。

 その中でも、シヴァ神はより上位の思考的、精神的な面を司っています。

 対してパールヴァティ女神は物質的な側面を表現しています。

 これ、中国で言う陰陽なんですよ。

 陽である男性性が形而上、陰である女性性が形而下をと分担しています。

 となると、物理的な威力は物質的な陰の司である女神が強い。

 パールヴァティ女神は姿かたちを変化させてカーリー女神に転身し、物質的障害を打破します。

 しかし、この強さは思考性を伴わないゆえの強さです。

 一般にはそれを狂気や獣性と呼びます。

 中国武術というのは、元神というこの人間の中の動物の部分を活性化させて用いるのが設計思想なのですが、元をたどればカーリー女神に象徴されるエネルギーだったのでしょう。

 カーリー女神は敵味方の区別もなく、ひたすら当たるを幸いに目に付いた生きとし生ける物すべてを殲滅して回ります。

 彼女は血に飢えており、惨殺に狂喜し、生き血をすすり、肉を食らって行進を続けます。

 この大量破壊女神は、生命の根源にある、奪い、殺し、食らい、犯すという暴力的な生命力の化身なのです。

 そりゃあ味方の被害や人道的措置を慮って戦うシヴァ神ではこのような暴威は出ません。

 敵を滅ぼして後は味方と無関係なすべてが滅びるしかなくなった時に、シヴァ神はカーリー女神の制止に出なければなりません。

 そうでないと世界が亡くなるまで女神は破壊を尽くすからです。

 怒り狂った奥様を止めるには、一体どうすればよいのでしょう?

 シヴァ神は女神の行く先に寝転がって待っています。

 新たな生贄を求めて女神はそこにやってきます。

 もちろん、彼女にはこれが誰なのかなどと言うことはもはや認識できません。

 物質的殺りく力の化身と化した女神には、そのような識がなくなっているのです。

 この寝転んでいる物をなりで切り刻んで首をもぎ取って血を吸い肉を食らってやろうとしたとき、シヴァ神の股間のシヴァリンガに気付きます。

 シヴァリンガとは、シヴァ神の生殖器のことです。

 インドでは一般的な信仰対象であり、あちこちに祀ってあります。

 私の修行所にもありました。

 本能に狂った女神は、たまらずそのリンガの上にまたがります。

 そう、野獣の本能のままに猛り狂う彼女は、ここで破壊欲求から性欲の方にシフトするのです。 

 そして性的絶頂に達して一旦意識が遠のいたのち、彼女は元のおしとやかなパールヴァティ女神として正気を取り戻すのです。

 ちなみに、この時の死体の姿を模して女神を待つシヴァ神の姿は、ヨーガでは屍のポーズとして伝わっています。

 このヨーガを用いて、猛り狂った物質的、精のエネルギーが霊的、思考的なエネルギーの元にたどり着いてはその上に至って両者が合一する、というのが、クンダリニー上昇、環精補脳法です。

 ヨーガの行、気功の小周天とはなんであるかという教えがこの不思議な物語として伝承されているのです。

 

                                                                      つづく


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