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病理の遠近 1

 私の住んでいる神奈川でおきたやまゆり園の事件から、先日で五年を迎えました。

 それと関わって、事件の背景を掘り下げた話がいくつかのメディアで紹介されました。

 私が初めにその掘り下げに接したのはネットニュースでだったのですが、執筆者が私が信頼していない、小山田系の90年代丸出しライダーだったのですぐには取り上げませんでした。

 当人はそのことを自省している様子を常々自分でも書いているのですが、だからと言って私は信頼することができません。

 その場その場で適当なことばかりしてきた過去がある訳ですし。

 しかし事件自体には大変高い関心があったので、その後いくつかの信頼のおけるメディアから情報を入手し続けました。

 それらの話を総合しますと、やはりだいぶん、事件当時に印象されていたこととは違う面があることが見えてきました。

 取材された内容を要約すると、事件には五つの理由があったのではないか、という切り口があったということのようです。

 まず一つ目の原因は、犯人自身の人格に由来するというお話です。

 元々優秀であった物の、障害があり、挫折の要因を抱えていた。

 これがね、初動で最も着地点だとみなされがちだった部分だと思います。

 それから次に、事件が起きたやまゆり園自体にも問題があったということ。

 事件直後に、黒岩県知事が調査をすると言っていたのですが、その後の結果についてはおそらくあまり知られていないのではないかと思われます。

 実際に、やまゆり園自体は多数の虐待案件があり、後日の取材に対しても園長の方から「取材に協力した者は懲戒処分とする」という通達があったことが報道されており、虐待及び虐待隠しの事実があったということのようです。

 これは犯人が新人時代から行われていたことで、犯人がそれを咎めたことがあったそうなんですね。

 そうすると咎められた先輩は「君も二、三年ここで働けばわかる」と答えたそうなんです。

 つまり、犯人の差別意識と言うのは環境から刷り込まれたという要素が一つあるようです。

 また、犯人が異常を発してそれに対策し、引き継ぎ書類にその旨を書き残したところ、上司から「大げさに騒ぎ立てて事件にするな」と隠ぺいを意図した叱責があったということも伝えられています。

 実際に、そこで書き残されたことが大げさに騒ぎ立てていることなのかどうかということを専門家が検証したところ「実に適切な対応であり、ぼくが責任者ならこういう対応が出来る優秀な人間は絶対に手放したりしない」ということを言っていました。

 以上から察するに、そもそもがそういう腐敗した環境があったということは間違いがなさそうなんですね。

 もちろん、報告された虐待の中には、夜勤でずっと対応をしなければならない職員の疲労を軽減させることを目的とした、いわば「さぼり」「ずぼら」と言ったような要素の物もあり、それらは意図的な虐待とはまた色合いが違う物だとは思いますし、真面目に働く職員の方々が消耗する大変な仕事だということは大いに想像するのですけれども、それらの上で、やはり犯人にとってはそれらが精神的に負担となって正気を蝕んだと言うことがあるとは思われる次第です。

 三つ目の要素は、薬物の問題です。

 犯人は違法薬物の使用歴があり、それによって精神に異常を来たしやすい状態となっていたのではないか、という角度からの視点もあるようです。

 彼は当時まだ普通に出回っていた脱法ハーブや大麻をしようしていた過去があります。

 脱法ハーブはその後、いくつかの事件が起きて取り締まりが厳しくなったように、犯罪を引き起こす要素を内包しているようです。

 また、大麻に関してはアメリカでも解禁が始まっており、カナダなどいくつかの国でも解禁の方向でのムーヴメントがあるようですが、これ、前提としてオピオイドの普及があります。

 医療用の鎮痛剤、オピオイドの持つ危険性については、映画「ウェイヴス」をご覧いただくと良いと思うのですが、作中では故障を押してレスリングの試合に出ていた選手がオピオイド中毒となり、殺人を犯す様が描かれます。

 実際、充分な説明を与えられないまま医師からこれを処方された人が大量に死亡したリ事件を起こしたりと言った数字が記録されました。

 それを見た当時のトランプ大統領は「これはメキシコ人が麻薬を持ち込んでいるからだ!」とまた騒いだのですが、そうではなくて医者が配っている物であり、その許可を事前に自分が出していたことを知らされて急遽中止をした次第です。

 このように、医療用麻薬の危険性は深刻な問題となっており、いきなり撤廃をするには代替方法が無いために、同じ医療用麻薬と言う枠組みのなかで、同じオピオイド系成分の薬物の中では比較的安全性の高い大麻に移行した、という前提があります。

 ですので、大麻は安全だから解禁に向かっている、などと言うのはまったくの誤解です。

 体重が100キロというのは、元が90キロだったと言う視点から見れば太ったことになりますが、130キロから見れば痩せたということになります。

 相対的な表現の問題にすぎません。

 数値で言うなら、大麻の致死性はアルコールやカフェインに及びません。

 その意味では非常に生命には安全だとされていますが、精神疾患の誘発性が高いという物があります。

 大麻の危険性など、バッドトリップをする程度の物だ、という説もありましたが、あるブンガク系のミュージシャンは精神疾患を患っていたことで有名だったのですが、後年、原因は文学的懊悩などではなくて海外で服用したマジック・マッシュルームによるバッド・トリップによるトラウマだと語っていました。

 バッド・トリップだけでもその何十年にもわたって精神を蝕む要因になりうる上に、大麻には単体で精神疾患を発生させるリスクがあると言います。

 神経を化学物質で刺激しているのですから当然でしょうね。

 これが犯人の凶行を誘発した一因であることは充分ありえるのです。


                                                                   つづく


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