大佐の率いる部隊は壊滅しました。
しかし、ダディともう一人の傭兵系、そいつの名は仮に、働きマンとしておきましょうか、そいつらがいる別部隊が分かれていて、そちらは島の逆側から潜入に成功したんですね。
彼らはその夜はキャンプを張って翌日に市街部に潜入することにしたのですが、ダディが夜中に目を覚ますと例の動物系の奴が、仲間の一人を喰おうとしてるんですよ。
動物系って言うけど、先のイタチと同じくどう見てもたんにズボンをはいただけの巨大な肉食獣で、一応人語は解するけど会話が出来るほどの知能はないんですね。
慌てて獣をぶっ飛ばして仲間を救ったダディは騒ぎで目を覚ました仲間たちに状況を説明して、獣を銃殺していいかと訊くんですが、それに反対したのが当の被害者。
彼女は例の動物遣いで、こういうのに寛容なんですね。
動物遣いと言っても彼女が意思を疎通することが出来るのは虫だけなんですね。
平安時代で言う虫。地を這う小動物だけです。
彼女の父親がそのためのツールを作り出して、それを使いこなしている。
なので彼女のことは今後、虫愛ずる姫、ムシメと呼びましょう。
このムシメは、優しく獣に、どうして食べるのかと訊くと、獣は「腹が減った」と答えます。
「腹が減ったら友達も食べるの?」と訊くと「友達がいたことはない」と獣は答えます。
それで「友達は食べたら駄目なんだ。友達になろう」と言って獣とムシメは友情を結ぶのですが、このシーン、すごく重要だと思うのですよ。
友達が居ないと言う獣ですが、当然です。彼は今後も、目に付いた人間はすぐ食べようとしてしまうのですから、これまも食べてきたのでしょう。
彼が人を食べるのは、そもそも種が違うからです。
この獣は「神様系」で肉食動物の神様の息子で、こういう風に生まれついているのです。
自分と同じ生き物は居ないし、他の生き物は食べないと生きていけない。
この、生まれつきそう出来ていると言う事情は、大佐の部隊で死んでいったサイコパス達も同様です。
彼らもまた、元々そういう風に生まれついたから自分とは違う他の物を捕食することしか生きる方法を知らない。
発達障害についてこれまで何度も言及してきましたが、こういうことへの認知をもっと世の中に拡充しないと、この分断は埋められないと思うのです。
銃火器で武装した軍の部隊に矛とかナイフで下手すりゃ素手で向かって行っちゃう連中だぜ?
お互いに理解が出来ていないのですよ。
自分とは違う他者と言う物が存在しているということをどちらも上手く理解できていない。
これはきっと、とても理解するのが難しいことです。
ムシメと獣はこの壁を越えようとしていたのですね。
そんなダディたちの部隊に、アメリカの作戦本部から通信が入ります。
大佐の部隊は襲撃にあったのだけれど、大佐は捕虜にされたので奪還しろとのこと。
囚われている場所もGPSから伝えられて、潜入の証拠を消すために誘拐している部隊も全滅させろという指示も加わって、ダディたちは指示された村に向かいます。
そこで女子供問わず、村の人間を殺害しながら大佐を探すのですけれど、実は見つかった大佐は村のリーダーとお茶をしていた。
実はこの村は、反政府ゲリラの村で、国の軍とは敵対関係にあったのですね。
だから、軍に攻撃されていた大佐を救出していたのです。
それなのに、大虐殺をされてしまった。
なんというひどい。
ザ・杜撰。
この、権力による決めつけの危険さ。
囚人部隊物だけあって、こういうことがきちんと描かれています。
つづく