前回、ドゥテルテ大統領について書きました。
現地の友人に前に「ドゥテルテ大統領はいつまで大統領でいる?」と訊いたら「ずっと」という答えが返って来たことがありました。
私は、任期が長いきがする、と感じて訊いたものです。
ずっと、というのは、彼が超法規的である、という意図の答えだったのだと思います。
しかし、実際には、彼は今期で大統領を引退すると宣言しました。
これは、フィリピンの大統領の任期が六年であると憲法で定められているからだと言います。
私が任期が長いと感じたのは、アメリカ大統領と比べて二年長かったからであるためですね。
ちゃんと彼は憲法を守ってみずから身を退きました。
ここからが今回お話したいことの主題です。
ドゥテルテ大統領が任期いっぱいで身を退いて次の大統領選には出ないと宣言した理由は、娘さんの現ダバオ知事のサラ・ドゥテルテ氏のバックアップをするためだ、と言う声が多く聴こえました。
フィリピンの大統領選の特徴的なところで、立候補の時にタンデムと言って、大統領と副大統領のセットで立候補するのですね。
なので、サラ氏が大統領、現大統領が副大統領候補としてのタンデムが想定されていました。
国民の、大統領になって欲しい政治家ランキングでは、サラ知事は一位の人気があります。
それも背景に、ドゥテルテ一族による政権の継続が憶測されていたのですね。
しかし、実際にはそうはなりませんでした。
サラ知事は、私は地元の政治活動でまだしなければならないことがある、として大統領選への立候補をしなかったのです。
代わりにと言うか、ドゥテルテ大統領が推している候補がいます。
それが、ボンボン・マルコス上院議員です。
彼、なんとあの、エドサ革命で逃亡したマルコス大統領とイメルダ夫人の間の息子です。
フィリピンの発展を十年は遅らせたような大統領と、その妻の歴史に残るバカ女の間の長男です。
民衆に追い詰められて亡命した夫婦と一緒に、ボンボンもハワイで暮らしていたそうなのですが、その後、帰国して上院議員となりました。
なんとこの時、彼は自分がマルコス大統領夫妻の後継者だと言うことを隠していたのだそうです。
ですが、のちに大統領選に立候補した時に対立候補にそのことを暴露されました。
結果、その時は落選となったのですが、今回再び立候補しています。
ライバルたちはいまでも「あの悪人の息子に権力を渡したらまた独裁をするぞ」と発言しているのですが、上院議員としての活動で彼は信頼を集めており、真面目な政治家と見なされています。
このボンボンを、ドゥテルテ大統領が支持するというのは面白いことです。
ドゥテルテ大統領と言うのは、実は現在の中央集権制を解体して地方自治制度に戻そうと言うヴィジョンを持っている人です。
フィリピンは元々、地方貴族の権力によって分権統治されていた歴史があり、ドゥテルテ一族もそのクランの一つです。
その貴族同士の連帯が、このボンボンにも繋がっているという気がします。
つまり、この動きの背景には、旧貴族勢力の連帯が見え隠れしているのです。
つづく