私は仕事前にマクドナルドさんで朝食を摂ることが多いのですが、先日は近くの席にインド系のご家族と思しき三人連れがおられました。
お母さまらしき女性の額には、大きなビンディが打ってあります。
マクドナルドさんでインド系の方を見ることもまれだったので、これは珍しい宗派の方々なのだろうな、と思っていたのですが、その数時間後に近所に住んでいるネパール人の友人と出くわした時に謎が解けました。
というのも、彼が「俺、今日は昼からお祭りなんだ」と言うので、同じ町に住んでいるだけに「どこの?」と何気なく訊くと、お国のだと言います。
なので、家族で集まってお祀りをしないといけないのだ、と言います。
そういう文化に興味のある私、それはどういう縁起のお祀りなのかと突っ込んで聴きました。
私がカンフー・マスターで、そういう関心を持っている彼は心良く答えてくれました。
曰く、ダサイー(ダサイン)と言われるお祭りで、ドゥルガー神が悪者を倒したことを記念するお祭りだと言います。ネパールでは最大の物なのだと言います。
これは正義が悪を倒したことを祝う物で、年上の人にあいさつをすると額にティッカという大きな印(私がビンディだと思った物)を付けてもらえて、祝福をしてもらえるのだと言います。
マジ。私も祝福してほしいじゃん。
そう思って、街で出会った人に頼めばしてもらえるかと訊いたところ、あれは染料をヨーグルトで溶いた物なので、持ち歩いてないと無理だと言われました。残念。
そこですれ違ったインド文化圏の人達に「ハッピー・ダサイン」とあいさつすることだけを教わって別れたのですが、一人になってから調べてみれば、このドゥルガー神が倒した悪者と言うのはアスラ神族のことだと言います。
神々の力と宝貝を借りて、この女神がアスラ神族の王、マヒシャースラ(マヒシャ・アスラ)
を討ち果たしたと言う規模の大きな戦いであったようでした。
そして、ドゥルガー神とは、カーリー女神の化身だとも言われます。
この辺り、話によって解釈の幅があるようなのですが、パールバティ女神がこの戦の時に神々の力を受けて生物兵器ドゥルガー神となり、敵を討ち果たした後にそのまま制御が利かなくなって手当たり次第に殺戮と破壊を行う黒い女神、カーリー女神に化身したという話があります。
物語の流れに合わせて言うと、アスラ神族の専横に対して怒ったシヴァ神とパールバティ女神が放った光からこのドゥルガー女神が生まれたと言うのですが、このパールバティ女神のような存在をインド神話ではシャクティと言います。
性的なエネルギーと言ったような意味があります。
男神と、その性的なエネルギー体としてのパートナーであるシャクティが二人で次の神を生んだ。
というか、シャクティ、性的エネルギーが分裂してドゥルガーという化身となった、ということのようなのです。
これ、私の研究の解釈で言うと、シャクティはすなわち、気功で言う精です。
この精が脳にある気である神に向かって行くことを気功では環精補脳、ヨーガではクンダリニー上昇と言います。
ウィキペディアで調べると、クンダリニーとは元々はシャクティ女神のことであったが、のちに独立して民間信仰になり、男性神となって軍荼利明王としてあがめられるようになった、とあります。
このことを密教の専門家であるブラジルの阿闍梨に尋ねたところ、彼自身も若い頃にお師匠にクンダリニーと軍荼利明王を同一視するような話をしたら、こっぴどく怒られたということでした。
クンダリニー=軍荼利説は、根拠のない俗説であるようで、仏教の世界では相手にされないことになっているお話だと言うのです。
なので、まぁ現状、私と軍荼利明王はご縁が繋がりません。
繋がっているのはシャクティであり、シャクティが化身したドゥルガー女神です。
これは私の友達もネパールの子もいうように「最強の神様」であり、誰にも倒すことは出来ません。
なぜなら、シヴァ神夫妻のみならず、他の神々のエネルギーも与えられており、さらには各神々から強力な宝貝を渡されてその幾つもの手に携えているからです。
彼女がまたがっている大型猫科の神獣もまたその一つです。
これに対するアスラの王の一味は、牛に変化したと言います。
本来は神聖な神の使いである牛に化けるというのは、ステルス戦略なのでしょうか。
それにまたがったアスラ王ですが、やはり最強の女神には勝てずに滅ぼされてしまいました。
この図絵は定番の図柄として様々な場所で観ることが出来るのですが、大型猫に乗った女神と牛にまたがったアスラ王は、一見どちらがいい物でどちらが悪者か分からないくらいに対になっています。
パールバティ女神がシャクティとして道のりを旅するという物語は、行者の体内におけるクンダリニーの上昇の経路を伝えている物だといいます。
ドゥルガーと対になったアスラ王の姿は、修行で間違った方向に行ってしまうことを表現しているようにも思えます。
そのようなマーラを調伏したドゥルガー女神ですが、しかしそのまま正気を失って暴走してしまいます。
クンダリニー症候群です。
ドゥルガー神から正気を失った破壊神、カーリー女神に化身してしまうというのは、これはあるいは力押しの修行の結果やはり魔境に入ってしまったということを意味しているのかもしれません。
そのまま世界を滅ぼそうとするカーリー女神を止めて元に戻せるのはシャクティを共にするシヴァ神によるセックスです。
中国気功における、房中術による調神が必要となります。
このように、身体文化と古い伝承は繋がっているから面白い。
つづく