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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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歴史に見る初期エスクリマの記録 2

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 前回のつづきを書いてゆきましょう。

 一般に城攻めは攻撃側が戦力で倍は勝っていないと難しいと言います。

 この時、先鋒のシオコが率いていた兵は200人の銃隊と200人の槍兵からなる400人。

 さらに、後衛として林鳳の本体が続きます。

 そして実際に、スペイン側の兵士は情報通りに200人ばかりだったと記録されています。

 対して林鳳の一味は4000人だったと「シナ大王国誌」にはあります。さらには、1500人ほどの非戦闘員も居たと言います。

 これはいくら要塞があって大砲が備えてあってもマニラ側は不利です。

 1574年11月29日に始まったこの襲撃により、現地総督のマルティン・デ・ゴイティは焼き討ちに会って死亡してしまいます。

 しかし、現地兵士と民兵らとの交戦になり、シオコは林鳳の本体の元に退却したとあります。

 この時のフィリピン側の兵士は、情報にあったとおりにスペイン兵はイベリアの兵が150~200人程度で、他には現地のイロカノ族という部族の戦士が200人、そして民兵が居た、とあります。

 この時の模様は資料によると「マニラ市民の反撃にあって撤退した」とあります。

 この市民の活躍を書いた一文が今回改めてこの騎士団長殺しの件を取り上げようと思った理由です。

 なぜなら、フィリピン武術、エスクリマの歴史には、そもそもがスペイン人が海賊たちから自衛させるためにスペイン式フェンシングを仕込んだのが始まりだと言うエピソードがあります。

 結局、マニラ全体を合わせて200人程度しかいないスペイン兵では、定期的に襲ってくる海賊には対応しきれない。そこでそもそもが精強な好敵であった現地人に剣を仕込んで有事には戦闘が出来るようにしておいたのですね。

 それが独自進化したのがエスクリマの発祥だとされています。

 実際、それくらいに当時のフィリピンには海賊が頻出していたと言います。

 モロモロと呼ばれるイスラム教徒の海賊がおり、ブギス人という海賊民族がマレー海域にはすまっていました。

 実際に林鳳の倭寇が攻めてきた時も、フィリピン側はまたボルネオ海賊だと思ったそうです。

 思いのほかの大所帯が押し寄せて将軍を失ったスペイン軍ですが、現地市民はこれを撃退した。

 この初めの対戦の二日後、シオコは兵力を1500名に増やして寄せかえしてきます。

 シオコは三方向から攻撃を仕掛け、イントラムロスからは砲撃での応戦となったのですが、最終的にまたシオコは要塞内に侵攻してきて、都市部路上での戦闘になったと言います。

 この時の交戦でシオコは死亡、倭寇たちは城壁内から撤退することになったといいます。

 恐るべき兵力差、および城内に侵入されてからの白兵戦での勝利として考えると、これは物凄いことのように感じます。

 これにはやはり、エスクリマを用いた市民の反抗があったのだと考えるのが自然でしょう。

 実際、この戦闘の後、民兵の中からドンの称号を得て現地貴族として表彰された者があったと言います。

 こういった人々が、現在大統領選に出ているドゥテルテ家やマルコス家、既存の権力を保持しているアキノ家と言った人々のルーツなわけですね。

 このドンの家の人達が、いまでも武装する権利を有し、民間の治安維持要員として街の治安を維持しています。

 

 話を戻しますと、第二次襲撃の後、生き残ったスペイン兵たちは、引き返した倭寇たちがまた押し返してくるのではないかと照会していたようなのですが、夜間に浜辺に松明が並んでいるのを見て襲撃に備えたところ、実は討ち取った倭寇たちから現地市民が掠奪をするのに使っていた灯だったというのですから、フィリピンの人たちの勇猛さがうかがい知れます。要するに、元々彼等も海賊だったということでしょう。

 この二回目の撃退の後、攻防は逆転して、フィリピン側が林鳳のジャンク船艦隊を追い回して砲撃を加えてゆくことになります。

 三か月もそれが行われた後、中国本土から林鳳追討の指揮官として王高望という将軍がマニラに訪れたと言います。

 林鳳は観念してタイに逃れて行ったと言う話が残っています。

                                                                   つづく

 

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