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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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身体哲学の聖典より 7

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 ヴィシュヌ神の正体を現したアヴァターラ、クリシュナは説きます。人間には三つのグナ(要素)があると。

 そのグナとはすなわち、純質、激質、暗質です。

 このうち最も良いのは純質であり、これは天や神、ダルマやヨーガに通じる心だとされています。

 人が瞑想をしたり勉強をしたりして、自分が世界に対するダルマ(義務)を果たす行為に繋がる心だと言われています。

 つまり、私が言う処の通天の要素です。

 これに対して、暗質と言うのは意訳するなら暗愚さ、頭の悪さ、血の巡りの悪さ、怠惰さなどだと言います。

 この要素の多い人は地獄に例えられる人生を送ったり、いつも飢えている餓鬼道に相当する生き方をしたりすると言われています。

 となると、これが純質と対応してもっとも最低な要素なのかなと言う気がしますが、実はそうではありません。

 はっきりと「最低の人間の質」と名指しされているのは激質です。

 これは激しさ、感情の動きなどを含めた資質です。

 この暗質が餓鬼や地獄に例えられるのに対して、激質は阿修羅に例えられます。

 80年代以降、サブカル界隈で阿修羅はかっこいいなんて印象が出ましたが、それはあくまで阿修羅に生まれて反省し、仏法に帰依してその守護者となった阿修羅王のこと。

 平均的な阿修羅はと言えば、これは他人と自分を比べ、上にへつらい下には媚びて人の足を引っ張ることばかりを考えて常に他人と競争することに執着すること=生きることという、最低のケツ舐めからっぽストーカー野郎となります。

 だからこそ、ギーターではこの手の人間を「最低の人種」だとしているのです。

 とはいえ、この手の人間は社会的成功をします。

 これは古代インドの段階からそうだとみなされているようです。

 ですので、この手の激質の人々は、自分は裕福だ、成功者だ、他人に勝った、もっと自我を拡大させようと現代人なら「向上心」とでも表現してしまいそうな気質を持っています。

 しかしこれは、まったくもって向上心が無いのです。

 なぜなら水平思考だけで、垂直志向が無いからです。

 そのためにヴィシュヌ神から「最低の人生を送る最低の人種」呼ばわりをされます。

 いやいや、明らかに頭が悪いせいで生活が苦しくて地獄の日々や飢えて餓鬼の日々を送ってる方がひどいじゃないかと私は思いました。

 裕福で物質に恵まれていて肩書があって欲望かなえ放題なんてそれと比べたら天国じゃないか、と。

 そうではないのです。

 明らかにいまより自然環境が厳しく、生存状態が苦しい古代インドでさえ、こういう人達は最低だとされているのです。

 なぜでしょうか。

 それは、この手の激質の人達は、最低の生を送る最低の人間であるために、何度生まれ変わってもまた同じ最低の生に放り込まれるからだ、とヴィシュヌ神は語ります。

 そこなのです。

 生まれつき頭が悪い暗質の人達というのは、いわば可能性がある。

 頭が悪いと言うのは、先天的な知脳の低さであったり、あるいは発達障害であったり、または教育を受けられない環境で育ったりという、いわば本人の責任ではない、フルに実力を発揮する機会に恵まれなかった人たちが含まれうる。

 しかし、激質の人達というのは能動的選択の結果、フルでそこなのです。

 発達が障害していても、感性が良かったり心根が良かったりと言うことがあり得ます。

 そうすると、機会に恵まれた時には純質に則って生きることが可能になって通天する可能性があります。

 また、地獄や餓鬼道に居ても善良な行為をしてダルマを果たすことが可能です。

 発達障害だとしても学ぶ機会を得られれば補うことも可能です。

 しかし、激質の人々は形式的に神々への祭祀を行ったり募金を行ったりすることはあっても、本心がそこに伴っていないために、カルマを払うことが出来ないとされています。

 カルマという概念でいうと我々現代人には分かりにくいですが、要するに人格的成長が伴わないので精神的な平安に至ることが出来ないということでしょう。

 どれだけの物を得たとしても、常に他人をねたんで他人の思想に怯えて、心を安定させることが出来ない。

 人間は自分の心の中に住んでいます。

 仏教でいう唯識瑜伽ですね。

 となると、自分の心が動きやすく貧しい以上は、永遠に貧相なエゴという牢獄から出ることができません。

 これが激質の最低の生です。

 暗質を知的障害が含むカテゴリーとすれば、こちらは現代的に言うと、未熟な自我、人格障害、精神疾患の類でしょうか。

 間違いなく激質の社会に生きている我々現代人としては非常に怖い話ですが、実はこれにはさらに恐い話が続きます。

 

                                               つづく


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