Quantcast
Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3388

トロイ 1

$
0
0

 キャンベル教授の神話学の観点を踏まえた上で、自分の学んできている身体文化の哲学の視点から、インドの聖典を読んだり、トム・ブラウンJRのスピリチュアリズムを読んだりしてきました。

 インド神話もネイティヴ・アメリカンの神話も、キャンベル教授が人類に共通する心理学的な神話の原型(モノ・ミス)として例に挙げている物です。

 その他の代表的な類型としては、聖書の内容や仏教が含まれるのですが、もう一つ、重要な典型として存在しているのがギリシャ神話です。

 本来ならもう少しだけインド神話を掘ってからギリシャに向かいたかったのですが、今回はあえて先にギリシャに向かい、その後でまたインドに戻ると言った形で研究を進めてみようと思いました。

 ギリシャと言ってもひろうございます。

 今回注目するのは、ギリシャ神話の中でも特に私が文化的、地政学的な資料として興味を持っているトロイア神話についてです。

 このトロイア神話伝説、中学生くらいの時に英語の教科書に載っていたシュリーマン先生の発見によって、ただの神話ではなくある程度史実を元にしたものであろうと見なされるようになりました。

 そのシュリーマン先生が発掘したトロイの都、現在で言うトルコだとされています。

 つまり、ローマ人が白人優位主義で歴史を書き換えるまでの資料では、ギリシャ世界、つまりギリシャ文化圏の東半分はアジアだったということです。

 さらに言うと、今回呼んだバーナード・エブリスンさん著の「トロイア戦争物語」では、もう一歩突っ込んだ部分にまで描写が及んでいます。

 まず、一般の書籍では「ギリシャ神話なのだから当然ギリシャはギリシャ」とされてスルーされる部分なのですが、これを「のちにギリシャと言われる半島」と表現しています。

 つまり、ギリシャ神話の時代ではそこはギリシャでは無かった。

 ギリシャだという概念そのものが後の時代に出来た概念であることが分かります。

 では後にギリシャと言われる地域とは何かというと、それぞれ別個の、アテナイでありスパルタでありマケドニアでありで、独立したポリス国家なのですね。

 もう、この根本概念が覆った段階からして私にはとても面白い。

 先にトロイはトルコでアジアであるということを書きましたが、ここに加えて書きつけると、すでに当時の概念としてトルコ以東がアシアと呼ばれていることが書かれています。

 つまり、ギリシャという概念よりアジアの概念の成立の方が早かったのですね。

 以前にも書きましたが、スパルタ初め後にギリシャと呼ばれる半島の国々は、これら古代からペルシャに大攻勢を受けて大変な思いをしている土地でした。

 現在の西洋優位主義以前には、東洋優位主義の時代があったということです。

 ペルシャの他にも見られるアジアの存在としては、ケンタウロスという物があります。

 お馴染みの半人半馬ですね。

 あれ、実はアジア系の騎馬民族であったということが言われています。

 このトロイア戦争における最強の英雄であるアキレウスもまた、幼少時にエリート教育を受けてケンタウロスから武術や学問を学んだとされています。

 ここでもアジア優位の時代背景がうかがえます。

 そもそもが、ヨーロッパと言う概念自体がアジア優位の中で圧されていた西洋地域の人々が連合がとして提唱した物だとさえ言います。

 そのような前提の中で西側陣営が連合を組んでトロイを襲撃した理由には、トロイアを陥落させることでその奥に連なる豊穣なアジアへの侵略路が開くからである、との動機もこのテキストには記述されていました。

 大変に興味深いお話です。

 そして、それ以上に興味深いのは、このトロイア戦争の経緯をたどったことで、キリスト教の思考に染め変えられる以前の西洋人の神話的価値観です。

 我々になじみ深い西洋的思考とはまったく違う世界観、神々の認識がそこにはあります。

 次回からそちらに触れて行きましょう。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 3388

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>