私は当然五輪などと言う物は観ませんが、パリ五輪の開会式が凄かったという話を聴いて、動画を確認してみました。
確かに面白い。個性的です。
馬に乗ったジャンヌ・ダルクが水面を走ってフランスに帰ってきて、切断された首を抱えた女性達(マリー・アントワネットだとされている)が唄い、最後にはその建物の窓から血しぶきが噴き出す。
また、踊りながらパレードをする人々が、次々にその場に倒れてゆくと言う演出も目にしました。
これらに関してまたぞろ頭の悪い陰謀論者たちが、悪魔崇拝だ! などと騒いでいることも知りました。
彼らはD・S、都知事選にも出馬した田母神氏言うとところの「デープステート」陰謀論を信奉しているので、この世界は本当に悪魔主義者の統一政府によってコントロールされているのだなどと平気でいえてしまう。
どんだけ優秀なんだよその組織。それだけやれたら大したもんだよ。
ちょっと横道にそれますが、田母神氏の「デープステート」には彼の狡猾さが現れています。
要するに、本当にDS陰謀論を信じている訳ではなく、ディープ・ステートを信じてしまう層、あるいは信じたい層、および、ディープ・ステートをデープステートと発音するような人々の支持が、ただその既存の陰謀論に乗っかるだけで獲得できてしまうと言う簡単に手に入る美味しい票田として使おうとしただけでしょう。参政党と同じです。
そういうポピュリズムです。
愚民化政策が広まり切ったこの国の社会では、結局バカをだますのが有利だと言うことを、十全に活用しているだけなのでしょう。
フランス五輪の開会式からは、それとは真逆の物を感じました。
これだけ危うい世界情勢、世界中の国家の七割以上が(日本も含めて)権威主義国化しているという民主主義の退行、西側資本主義の下で演出されたイスラエルの侵攻と言った環境の中で「平和の祭典」やらを称してこのバカげたサーカスを開催するということを、極めて分かった上で批判的に行っているのだと解釈いたしました。
いかにもフランスらしいと言う感じがします。
「馬鹿げてるよな? こういうことだもんな」とあえて露悪的にバカとしてふるまって見せる。
道化の権力批判ですね。
愚民の糾弾を交わすポピュリズムの策として有効なのは、パンとサーカスであると言うのはローマ時代から言われていることです。
現代民主主義の母国であるフランスは、既存の王権神授制度を破壊して民衆革命を起こして民主主義を広めました。
もちろんその後、かの悪名高いジャコバンどもの恐怖政治によってテロリズムと言う言葉を産み出すことにもなりました。
まさにそれらのことこそがいま、世界中の人間が観ているコンテンツとして思い知らせるべく表現することではないでしょうか。
この革命の時に象徴的にギロチンに掛けられたマリー・アントワネットは、実は本人は言っていなのですが「パンが無ければケーキを食べればよいのに」という言葉が有名です。
これは当時の新聞報道が、あたかも彼女の態度はそのようだということで記事書いたものであるようですね。
つまり当時のブルボン王朝、ヨーロッパを支配する貴族階級に対してマスコミが付けたキャッチコピーです。
ここで出てくる「パン」。
これ「パンとサーカス」のパンですよ。
元々ヨーロッパを支配していた貴族階級の一大潮流、ハプスブルグ家はローマの末裔だということを根拠に白人社会での権力を主張しています。
マリー・アントワネットはその一族です。
だからパンの話になる訳ですよ。
で、それをこのオリンピックに引き合いに出してくる。
パンとサーカスですよ。
それをやってる側が言ってるのですね。
この批判精神、フランス人の気質を見る思いでした。
なお、ギリシャ時代は民主制が敷かれていましたが、その後継国であるローマからは権威主義が西洋中に広まってゆきました。
これを決して、元々あった民主主義が愚かな人類にはふさわしくないから、君主制へと進化したのだ、などと言うようには私は決して思いたくありません。
自己批判と知性による民主制こそが、たとえ背伸びだとしても我々人類には理想的な制度なのだと思いたい次第です。