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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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よりからない、ぶらさがらない

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 カンフーにおいては、体重を掛けない、よりかからない、ぶらさがらない、ということが重要だと平素から伝えています。

 しかし、世の中のほとんどの人達、素人も経験者も多くの人達は、かならず人に寄り掛かるしぶら下がります。

 相手を掴んでそのまま下におろしてください、とか相手を掴んで自分の方に引き寄せてください、というようなことをしてもらうと、突然相手にしなだれかかるように身体を斜めにして体重を掛けたり、お尻を突き出してその場でしゃがみこんだりします。

 まるで骨格の定まっていない幼児のような姿です。

 これは、まだまだ自分で立てていないのです。自立が出来ていないんですね。

 素人だけならまだしも、武術を長くやっている人や下手をすると教えている人達でさえこれをやります。

 それじゃなくて、まっすぐ自立したままやってみてください、と言葉で修正をしてもらっても、必ず同じことを繰り返してしまいます。

 まだ、自分で立つということをした経験がないためです。

 それで「いや……難しい……」と困ったような顔をするのですが、これは平素からそうだからです。

 多くの人がご存じのように、中国武術では諸学の内にただ立つという練習を行います。

 これが嫌でほとんどの人が辞めてしまう。

 この期間を乗り越えた人でも、いざ人に技を掛けるとなると、全然練習と関係なく寄りかかったりぶら下がったりしてしまう。

 これはですね、確かに体重を掛ける技法もあるから仕方ない部分もあるのですよ。

 流派によっては、それを行います。

 私がその差異に気づけたのは、蔡李佛拳のメインストリームでは寄りかからないのに、併伝されている太拳ではぶら下がるような動作が強調されて存在しているからです。

 明確に使い分けされているのですね。

 実際には、ぶら下がるような動作と言っても本当にぶら下がるのではなくて、きちんと制御されて技術的に完成されたぶら下がり方をするので完全にぶら下がってはいないのですけれども、ある程度ぶら下がる要素を「技術」として行う部分があります。

 きちんと立つ力をまず養っておいて、体重を相手に寄り掛からせたりぶら下がらせたりすることで、威力が増すというのはある程度までは真実です。

 ですので、勢い、開合を使う門派ではこれはありでしょう。

 しかし、そういう物では無い、割かしゆっくりで重いタイプのシステムではこれは使わない方が威力が増します。

 足し算をするよりも引き算をして、本質を純化させた方が精度が上がるのですね。

 これを追求してゆくと、うまく相手を投げ倒した時も、自分はその場でまっすぐに立っていることになります。

 揺れたりブレたりしない。

 動く力を使っていないので、その残滓がその場にないからです。

 もし相手に寄り掛かる力、ぶら下がる力であったなら、その余りによって自分もよろけたりしてしまいます。

 これは柔道の足技が顕著です。

 代表的な物にけんけん内股と言われる物がありますが、不安定な状態で相手を投げています。投げ終わった後もよろけてたたらを踏んで体制を立て直したりします。

 場合によっては背負いや腰技でも相手の上に乗っかってしまう。

 倒れ込みながら技をかけているからです。いわば、自分が倒れるのに相手を巻き添えにして投げているからです。

 そうではなくて、自分は立っている。相手は倒れている。

 より、自分を正しく保っている方が、ぶつかり合ったときに立っている、これは功夫の基本であり、実に東洋思想的だと言えましょう。

 行として見るなら、それを体感するためにやっていると言ってよい。

 なのでけんけん相撲は禁止です。王道の、自分は安定して立ったまま、相手だけが崩れて倒れてゆくように行うのが目標です。

 動く力でではなく、動かない力で全ての技は行われる。

 それができれば、完全にコントロールを失って倒れる相手を、揺らぐことなくかばい手で支えることも可能です。

 まぁもちろん、いつもいつも必ずうまくできるとは限らないのですが。

 そして、これが上手く行って投げた後も変わらずその場で、何ごともなかったように立っていられるということは、これ、日本武術で言う残心の状態になるのですよね。

 剣禅一致が追及された時にもたらされた発想なのではないでしょうか。

 

 


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