以前から楽しみにしていた、ラプンティ・アルニスの東京上陸がとうとう果たせました。
スペインからセブに着地し、そこで中国から来たものと融合されて、さらにマニラに北上した物がようやくさらに日本の首都にまで来れました。
ここまで四百年以上かかった。
フィリピンの文化母体と言うのは、スペイン、アメリカ、そして日本なのだそうです。
街を歩いていると、この三つの国の言葉が氾濫しています。
パンのことは英語でのブレッド、ではなくてスペイン語でのパンです。
日本人はジャパニーズではなくてスペイン語でハポネス。
街の標識などはみんな英語で書かれています。
そしてあちこちにラーメンや牛丼などの日本の食べ物のお店があります。
日本で言うカルビーみたいなメジャーなポテトチップスのブランド名は「オイシー」です。
それを売っているコンビニのホットスナック・コーナーではカリパンという日本のカレードーナツが人気です。
しかし、そのようなことはほとんどの日本人は知りません。フィリピンの人々にとっては日本というのは、アメリカにおけるイギリスのような存在なのですが、日本側はあまり彼らに親族意識を持っていない。
だからね、この二つの国のつながりがほんの少しでも日本で知らせられるのは私には意味のあることなのです。それも良くしてくれたフィリピンのみんなへの恩返しです。
そんな訳もあって、今回のワークショップの内容を決めるにあたって、すごく注意したのは、ラプンティ・アルニスの全体像をなるべくばっくりとでも把握してもらえるようにすることでした。
普段もワークショップではなるべく広範囲的に全体像が伺えるようにはしているのですが、特に今回はほかのどこでも誰もやってことのないものをやるので極めて注意しました。
エスクリマの特徴として、そもそもがシチュエーションがきわめて多様性に富んでいるということがあります。
兵器と兵器、兵器と徒手、兵器二つで左右長さが違う、など、シチュエーションが入り乱れます。
そのような様相の違いにどうしてもエゴは囚われてしまうのですが、そこに惑わされずに根幹を理解することを私は推奨しています。
そのためには、ある程度の展開の深度の深いところまで通して経験していただかないと、一体これが何をする武術なのか分からなくなってしまうことを懸念していました。
そのため、戦いの展開が深まるのに合わせて、基本からその状況ごとの戦況の見立て方とその展開の仕方をちょいちょい区切って説明してはもう一歩次に進むと言うことを繰り返しました。
これは結構面白いことだったのではないかと思います。
私も、単に直線的に勝ちを求めて猛攻してしまいそうになる剣術に、そのような段階的な状況の観方や誘導の仕方があるとはマニラで教わるまでは知りませんでした。
そのような口訣を一つ一つ知ると、皆さんの動きがまるで変ってゆきます。
初めはただ受け止めるのも難儀していたのが、きちんと段階を踏んで学んでゆくと、受けられて当たり前、反撃出来て当たり前、という世界になっていきます。
練習が終わるころには、未経験の方たちも戦い方を自分なりに理解してうまく活用して戦えていました。
そのようなマニュアルのあるところも、家伝系剣術の面白いところだと改めて感じました。
来てくれた皆さん、会場を用意してくれたドクトル、そしてフィリピンのマスタルとブラたち、本当にありがとうございました。
心の満腹になった一日でした。