本日は、土曜日の通常稽古でした。
前回目についた骨格運動の修正を課題としました。
なぜこれをしてしまうかというと、おそらくは人間安定した視点がほしいのだという説明をまずしました。
それを分かりやすくするために、ポケットからハンカチを出して人差し指と親指でつまみ、スナッピーに学生さんを打ちました。それなりに痛いですよね。
この、鞭の威力を出すためには、当然つまんでいる場所という支点が必要です。
この視点が無いとこうなります、とハンカチを投げつけました。不快ですが痛くはないですね。
なので、エネルギーの集約、コントロールのために人は支点がほしいのです。
そのために、ひじ関節や手首関節を使ってしまう。
そこから末端がハンカチ、後ろ側が土台です。
うちのコーコーさんは手首をうまく使って相手を打つ拳法をやっていたので、それで撃たれるとトスンと中に威力が入ってきます。実に上手なものです。
しかし、それは我々のやり方ではありません。
なのでそれをしないで、というと、今度は肩関節を使ってしまいます。これは多くの人がやることです。
肩の関節を詰めておいて、勢いよく伸ばしながら腕を弾丸として打ち出す。この場合、土台は胴体ですね。これなら先ほどまでのやり方より弾が大きく重くなっているので威力は増します。
でも、これでもない。
私達の支点は足の裏です。
土台は地面です。
すなわち、弾丸は全身。
これが我々の、整勁で打つ発勁です。弾丸は全身。
では、関節部はどうなるのでしょうか?
肘や肩の関節で打っていた状態では、この関節の運動がいわば火薬の役割を果たしていました。
土台と弾丸の間にある火薬の爆発によって威力が成立するわけです。
しかし、全身を弾丸、土台を地面としてしまえば、火薬に相当する部分がありません。
ここで、骨格運動による打撃なのか、発勁なのかが問われるのです。
後者の場合、全身の膜に通る勁を火薬にします。
これを瞬発させるわけではありません。勁をつなげて動かすことで、十分に加速は出来るのです。
私が踏ん張った相手の大胸筋や腹直筋をまっすぐ打つと、踏ん張った姿勢のまま相手が一瞬で後ろにスライドします。この、ビリヤードのような効果が出るのは上に書いたような土台と勁の使い方があるからです。
前手で拳一つの距離、腕は伸ばし切ったところから体重移動しないでトンと打っても同じことが起こります。
それこそが私たちの勁力の使い方です。当たったところが痛いとかいうものではないのです。
この勁力を確認するための練習が「推」です。
相手に踏ん張ってもらい、それを両手で押し飛ばします。
勁がつながっている状態だと、何気なく推しただけで相手が軽々飛びます。
今日は実験として、同じことを勁を切ってやってみました。
まったく押された相手は動きません。突然相手が重くなったように感じます。
私もやってみましたが、学生さんに驚かれました。こんなに弱い先生は初めてだなんて言われました。
私はわりにガラは大きいし、ベンチプレスで140キロを上げるのですが、それでも勁が無いと人間は推せないようです。
これはすなわち、骨格運動の打撃と発勁の威力の違いそのものということなのでしょう。
勁が切れていると、体をうねらせてタメを作って推すようなってしまうということもわかりました。すっと触れただけで威力が出るということとまったく逆行します。
このように、理屈を説明し、実験を行いながらやるから、みなさん短時間で勁力が要請されるのだと改めて感じました。