タピタピを日本人が理解するにはおそらく、まずはラルゴ(長距離間合い)のエスグリマの時代のことを知るのが早いでしょう。
この時代はとにかく遠間で戦い、主に相手の手をカウンターで狙ったりするのが盛んだったと聞きます。
現代にもこのスタイルを遺したイラストリシモ先生は「ディスアーミングってのは相手の手を切ることだ」と言ったとか。
この場合、刃物同志を打ち合わせることもまったくないわけではないようですが基本はあまり推奨されず、相手に見せかけの攻撃を出して迎撃を引き出しておいてそこにフェイント技を仕掛けるということが重視されてようです。私はそのようなことを「エンガーニョする」と習いました。
次に間合いがだいぶ詰まってミディオと呼ばれる中間距離の間合いでは、それより近いコルト(近距離)とほとんど変わらない攻防が行われるのですが、ここでリニアルとクルバダの違いがでます。
リニアル(リニューアル?)は19世紀末に開発された、剣士の時代の物としては新しいものらしく、間合いが近くなっているのですが兵器の軌道自体はラルゴの時と同じく直線的な物が多いようです。
一般に行われるソンブラダやパラカウなどはこのリニアルと同様の物のようで、直線的、最短、最速の攻撃が多用されます。
これに対して防御はクロッサーダ、あるいはヴァーティカル・ブロックと呼ばれる攻撃に対して直角目安の角度で受けるブロックで対応をします。
私は「アタックは大別して五つの方向からくる。それを受ける方法は、ヴァーティカル・ブロック、ヴァーティカル・ブロック、ヴァーティカル・ブロック、ヴァーティカル・ブロック、エンド、ステップしてヴァーティカル・ブロックだ」と習いました。
ここからさらに技術が発展して、とても変則的な攻撃が工夫されるようになります。それが我々の名前についている「アバニコ」であり、クルバダです。
ここではそれまでの直線の攻撃から、円の軌道の攻撃が行われるようになります。
こうなると、たとえ直角で受け止めたとしてもそこから角度が変わって攻撃が来る。なんなら初めから直角じゃ受けられないようなところにくる。
例えば真向上段から打ってきて手首が変わって後頭部を打ってきたりします。
こうなるともう地獄で、近場から相手の手を追いかけて対処しようとしても手のあるところと打ってくるところがまるで違う。あわあわしているうちに打たれに撃たれまくってしまうことになります。
だいたいこれを連続で十五発くらい叩き込むように、練習中はしつけられました。手を休めると「ラピードラピード!」と高速連打を要求されるのです。
練習の大部分の時間をしめるサヤウ(舞、型)の練習はこの連打が一筆書きで自然に出来るように体に癖づける意味があるのでしょう。
その連続した動作の中で相手を巻き取り、あるいは変なところに棒先を差し込んで、相手の得物をからめとったり関節技を掛けて投げ倒したりします。
大切なのはその最後の仕上げの部分を単体で行わないこと。あくまで流れの一環として巻き取れるようにもってゆくことのようです。
タピタピは自由な技の攻防の中で、これがスムースに出来るようになるためのフリー・フロウな練習です。
さて、無事に皆さん出来るようになるかな?
この感覚のあるエスクリマドールを育成するためのカリキュラム作りにも関心が高まるところです。
みんなでいろいろ試して研究して動きを身に着けていきたいものです。