第二次世界大戦で、とうとう誇り高き騎士の戦いは完全に終了します。
なぜならこのころ、すでに参戦国の多くは民主化された現代式の国家となっているからです。
そのため、多くの「一般人」が徴兵されて兵士となりました。
これはすなわち、被害にあうのも一般人であることが辺りまでであるということです。
それまでのように戦場を決めて騎士同士で陣形を組んで会戦をするというようなことではない。民間人の居住区で居住民めがけて爆撃や砲撃が行われることになります。
特にアメリカはこの間「民主主義の武器庫」と自ら民主主義の代表軍勢であることを標ぼうしていました。
そのため、この戦争は長くアメリカで「グッド・ウォー」良い戦争と語られていました。
これは対戦国が現在でも世界NO1クラスの悪の帝国であるナチス・ドイツをはじめとしてファシズム国家であり、正義の民主主義対悪のファシズムという分かりやすい構図に要約された部分があるからです。
これを根拠にアメリカは、世界の警察、正義の象徴、キャプテン・アメリカとしての立場を立脚したのです。
それが躓いたのがかのベトナム戦争です。
共産国家への牽制のために起こしたこの戦争も、同様の構図の延長で展開していたアメリカ政府でしたが、今回は世相がそれを認めませんでした。
大義にかこつけた侵略行為という現実が露わになってしまったのです。
それに前後して、過去の大戦でもその側面があったのではないかということが国内で明らかにされはじめました。
そこで起こったのが、カウンター・カルチャーという社会現象です。
これは反文化運動、という意味ではありません。アメリカ政府、もっというとアメリカの大人たちがこぞって作り上げてきたアメリカという国家に対する共同幻想を破壊しようという運動です。
アメリカは正義、アメリカ最強、アメリカ最高、というアメリカの夢を、若者たちが暴き立ててゆきます。
ここでヒッピー・ムーヴメントが起き、そもそも西洋的価値観そのものが間違っていたのではないかということになって、禅、カンフー、ヨガと言った物がサブ・カルチャーとして根付きます。
かつてヨーロッパで起こった神の死からの東洋哲学へのシフトのアメリカ版のようなことが起きたわけです。
公民権運動、ウーマン・リヴ運動などは、この流れの中で起きたものです。
だからいま、南北戦争時代の「アメリカの夢」を求める人々がアメリカ・ファーストの社会を取り戻そうとトランプ政権を支持しているのに対して、これらカウンター・カルチャー層の末裔が反対運動をしている訳です。
「ドリーム」「デトロイト」「シェイプ・オブ・ウォーター」また「ブラック・パンサー」の冒頭などの映画の設定がみな60~70年代なのはそのためなのです。
「ワンダー・ウーマン」の時代設定は第一次大戦下でしたが、あのキャラクターが創作されたのはまさにこの時代で、作者は女性の人権運動の啓蒙活動家でした。
いま現在のアメリカでの世界勢力への力の流れというのは、このような状態のもとで生まれているのです。
つづく