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Channel: サウス・マーシャル・アーツ・クラブ(エイシャ身体文化アカデミー)のブログ
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フィリピンへの追想・1

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 定期的に見る動画がいくつかあります。

 そのうちの一つがこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=F4VMz5SOCJg&t=214s

 セブの二大バハド流派の一つ、バリンタワックの直系三代目、ロドリゴ・マランガ先生のコンバット・エスクリマ・マランガ(CEM)のトレーラーです。

 初めに制作会社のロゴが出てくるだけあって、非常に美しく良く出来た映像です。

 音楽の使いかたもすばらしく、フィルムっぽく見せる「シティ・オブ・ゴッド」やガイ・リッチー映画風の演出も感心させられます。

 この美しいヴィジュアル・イメージによって、昔の私はいつか行こうとしていたフィリピンへの想いを高めていました。

 私が初めてフィリピン武術を習ったのは20年以上前で、場所はセント・ルイスです。歩いす・グレーシーがUFCのチャンピオンだったころです。

 そこで通っていたアメリカン・カンフー道場のカリキュラムに含まれていました。

 アメリカン・カンフーらしく、セルフ・ディフェンス主体のジムだったのですが、フィリピン武術では棒と棒を打ち合わせるペンキ・ペンキのようなことをしていたように記憶しています。

 それというのも、それがアメリカの「カリ」だったからでしょう。

 その後、帰国して数年、日本でも「カリ」が出来る場所を探していましたが見つからず、インターネットが普及してからのち、色々と探していましたが「カリ」と検索しても英単語の「おかひじき」というもの(おそらく植物)しか見つかりませんでした。

 そうしているうちに、在日外国人による練習グループを立ち上げるという記事を見つけて、英語検索サイトでなんとか文章を書いて連絡を取りながら第一号練習生として参加することになりました。

 リーダーはハワイ系のトレーダーで、初対面の時に、ほんの先週まで靴の買い付けでいたコソボで空爆が起きたので危なかったと言っていたのを覚えています。

 二人から練習を始めて、日本の大学で教授をしているイギリス人の紳士や、オーストラリア人のインチキツーリスト、中東の子、インドネシア人のプロパン屋さんなどが集まってきました。

 そこで数年楽しく遊んでいるうちに、やっていることが良く分からないことが分かってきました。

 いや、わかるんですけど、やればやるほどやることが増えて行って見えない物が見えてくる。

 そのうちに、フィリピンでやっていたという子が来るようになって、どうやらフィリピンでやってるのとこの「カリ」はだいぶニュアンスが違うらしいという話を聞くようになりました。

 それまでの私たちの望みは「いつかカリフォルニアにいるイノサント先生のアカデミーに行こう」という物だったのですが、どうも差異があると聞いてからは「これはフィリピンにいくべきなのではないか?」という物に変わりました。

 それから実際に渡航するまでの間に、JKDのインストラクターと交流をしたり、フィリピンから来たマスターに教えを乞うたりしたり、やはりアメリカスタイルの別のカリの人に教わったりしたのですが、どれも違う……。

 ほんとに、みんなそれぞれに違いがありました。

 日本で初めてフィリピン武術の諸流派の成立と特徴を書いた本が出たのはその頃です。

 派によってまったく違うし、それらの成立過程や時代によっても地域によってもまるでコンセプトが違う。

 外国で創作されて本土のものとはまったく違う物になったものが基本的には日本ではほとんどであるようです。特にアメリカからの二次輸入が最も多い。これはフィリピンがアメリカの統治下にあったことに由来しています

 本土の直系の物は、大きく分けると四つに分かれます。

 そのうちの四つ目は、アメリカ式の逆輸入をされた物で、おおむね名前を「カリ」と改名しているところがこのパターンであることが多い。

 これらはもう完全に現代式で、要はアメリカのカリ化している。

 このカリの流れも二流はあって、イノサント先生のグループの元祖カリと、現代式アーニス、すなわちモダン・アーニスがアメリカで「カリ」の名前を逆に流用して名乗ったのが戻ってきた物があります。

 このモダン・アーニスのグループは、フィリピンから移動しなかったものはモダン・アーニスと名乗っていますが、一度アメリカに渡ってから戻ってきたグループは「カリ」と名乗っているのでいささかややこしい。

 いずれにせよこれがモダン、現代式のグループです。

 伝統流派の名前を関していても、途中からカリと名前を変えて現代式に内容をまったく変えている派も有名です。

 それらの現代流派を探っても、伝統的な本来のフィリピン武術の実態を知ることは非常に難しい。

 それが最初の私たちのような「わかったし出来るけどこれ最終的になんなの?」となるパターンです。

 拡張された自我は得られるのですが、流派の本義というような中核の深奥が見えてこない。

 まぁそこは考えないでただ楽しめばそれでいいのですが、辿りたくなると途中で道が途切れて

ことが分かります。

 それは、これが「武道」のような物ではなくて創作総合格闘技だからです。

 現代人による創作に途中から成り代わっているので、本来の技術とは断絶がある。

 それで私も、伝統エスクリマを知りたいなと思っていました。

 現地での伝統エスクリマは大きく言うと三つです。

 

                                                  つづく


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