さて、フィリピンでの練習も佳境に入り、秘伝とされているモンゴシを日々訓練しております。
事前に「シャツを六枚持ってこい」とマスタル・ロドンハに言われていて、ジムに行っても真っ先にグランド・マスタルから「シャツの換えはあるか?」と訊かれるくらいだったのですが、確かにずぶぬれになる……。
久しぶりにシャツが絞れるくらい汗をかきました。
しかも一度に二枚。
三枚目からはもう換えても無駄だと思ったんで濡れシャツのまま最後までやりましたけど。
この原因は、空調一つない熱帯の、打ちっぱなしのピットファイト場みたいなジムでやっているからというのが一つ。
そしてもう一つは、これが走り回るんですよ、モンゴシは。
これが大変。
洪拳は走り回るというし、蔡李佛でも北勝館系などはよく走ると評判がありますが、モンゴシも同様に走ります。
基本の歩法を、地面に図を書いてひたすら走る。走(ゾウ)!
足を止めて手だけちょこちょこ動かしていればいいような楽はさせてもらえない。まずはフィジカルと言った感じ。
ここにやはり中国武術の形跡が明確に見えます。
特に、反乱結社系武術は有名な梅花樁などでもわかるように、移動を重視しています。
モンゴシはそれもすごく移動距離が大きい。
これは、確かにゲリラ戦や乱闘などに活かされるようにデザインされている気配を感じる。
モンゴシの特徴は、止まらないこと。
私の大好きな黒田有彩の持ちギャグ「止まらない止まらない」よろしく止まらない。チャングは止められない!(韓流通向けギャグ)
足だけでなくて手も止まらない。ひたすら走り回りながら連打を繰り広げて行く連梢帯打の武術のようです。
その止まらなさでは急所が常に打てないかもしれませんが、そこはさまざまに当てられるところに散らしてゆきます。
胴体だけでなくて足も打つし、打てなければ掴むし、破橋を非常に重視しています。
この、橋を壊すというのは相手の手を破壊するということで、蔡李佛や洪拳でも重視されている概念なのですが、まさに蔡李佛の鶴の要素、担ぐ橋などが非常に多用されます。
これは明らかに心意、南少林の流れの動き……。それも動きの少ない平行立ち系ではなくて動き回る平馬系。
発勁は無いようですが、柔術的な動きで相手の腕から首にダメージを与える動作があったり、借力が使われていたり、鍛錬ではカーミのようなことがされていたりとものすごく興味深い。
他のボクシングやムエタイ式のマノマノとはだいぶ趣が違います。
とりあえず、毎日帰りの電車が他のお客さんに申し訳ないくらい汗だくになり(着替えてるのだけれど汗が引かない)、新しいTシャツを調達しながら暮らしております。