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便利と伝統

ある空手団体の大先生の本に、このようなことが書いてありました。

「アメリカに行くと、現地の連中が星条旗や迷彩の模様の空手着姿で、奇声を挙げながら飛び回っている。あれはなんだと聞くと、カジュケンボだと言う。空手、柔道、拳法、ボクシングを混ぜたものだと言うのだな。本物の空手が身近にないから、あこがれて真似をしているわけだ」

また、別の先生はハワイに道場を出した時に、金色の帯をしめた道場破りに挑戦されたことがあると言います。

「お前のしめているのは黒帯だからまだまだだ。おれは十段だから金色帯をしている、といって来るわけだ。自分のは空手、柔道、拳法、ボクシングを混ぜたものだから最強だ、とも。こういう奴は見せしめにしないといけないと思って思い切り前蹴りを入れたら膝まで腹に食い込んだよ」

このような話から、長い間日本の武術家、武道家の間では、アメリカ格闘技というのは笑いものでした。

しかし、90年代にUFCが行われ、アメリカン・ニンジャやアメリカン・カラテ、アメリカン・カンフーがそれぞれのスタイルで戦っていた時代を経て、今のUFCではみな、ボクシングもレスリングもこなれた選手たちが育っています。

もともと、独自の流派を持った者同士が一つのルールで戦うという思想があったものが、試合で勝てるための技術を洗練するという、総合格闘技化が行われた結果でしょう。

現在は日本でも動揺のミックスとが進んでいます。誰がカジュケンボを馬鹿にすることが出来るでしょう。

アメリカ人の混淆、ハイブリッド主義が、最先端のファイト・スタイルを切り開いて、それが日本にも輸入してきている時代です。

それらのフロンティア・スピリットを馬鹿にできるのは、本当に純粋な技術を保持している一握りの人々だけでしょう。

私は、純粋な伝統文化の継承者としてカンフーを行っていますが、一日に五回はコンビニエンス・ストアに行きますし、ファースト・フードも毎日食べます。

たまにはユニクロも着ますし、乗っているのは国産のアメリカン・バイクです。

完全純血主義者では決してありません。

コンビニエントやハイブリッドな物はそれとして活用しています。伝統的な物は伝統的な物として愛好しています。

それは、現代に生きる伝統技術の担い手としてまるで不思議ではないと思っています。

伝統武術の技術に寝技を導入したり、グローブを取り入れたりしようとはまるで思いません。区別することで、それらの持ち味がより活きるのだと思っています。

中庸、調和こそが、伝統思想の最も重要とするところです。


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