タイの内功に最初にきっかけを持ったのは、ある生徒さんのおかげでした。
その方は整体を講師までされてる方で、大変に熱心に身体のことを研究されています。
あちらこちらで行われる業界のセミナーなどにも足しげく通い、常に技術と見識を積まれている立派な方で、この方がある日本古武術の身体操法が我々の物と共通すると教えてくれました。
ちょっと調べてみると、どうもその日本武術は近代化以降に大幅な改変を加えた物らしく、その時に中国武術をかなり意図的に取り入れたらしいということが武林では語られていることを知りました。
それだけならよくある話でなんの関心も持たないのですが、その流派は治療法にも力を入れており、どうやらそれがその生徒さんの友達のタイマッサージの方曰く、タイ式に共通すると言うのです。
タイ式にある、ジャップセンという身体の中の線(経絡、腱など)を弾く療法がそれだと言います。タイ式にそういう物があるということをその時初めてしりました。
そして、その方法が武術においても割と用いられるというのは、実は中国武術では知られていたことなのです。
これはあの秘伝のモンゴシにも伝わっていて、私も練習中にいきなり体内の線をグっと無造作に掴まれてものすごく嫌な気持ちになったことがあります。
この、中国武術で言う抓法、我々で言う拿字訣、分筋鎖骨法などと言う物で使われる相手の中の力の流れを掴む手法を、療法として行っているということは、その視点から体内の力の流れを学べるからいいなあと思ったのが、タイ式のマッサージなどに興味を持ったきっかけでした。
そう言ったタイ式の東洋医学の考え方を調べてみると、それがお釈迦様の主治医であったというシヴァカ師という人の作った物であるということを知りました。
この方はパキスタンの方で、当時のインド文化圏で普及していたアーユルヴェーダやヨーガスートラと言った経典にある学問に精通しており、お釈迦様が布教をしている時に出会ってその哲学集団に入ることになったそうです。
有名なスジャータの故事にあるように、お釈迦様は最初、ヒンドゥーに伝わるヨーガの苦行をして悟りを開こうとしていましたが、結局苦行は苦行でしかなく無意味で、別に身体を苦しめることが即悟りに通じるわけではないと思われて身体に悪くない修行にシフトされました。
その行の編纂をしたのが、このシヴァカ医師のようです。
生活の中での疲労や病などを治療する学問を設定し、ヨガの行を体に良い物へと変えました。
後者の方が、ルーシーダットンと言うタイ式ヨガだそうです。
ルーシー(リシ)は行者、ダットンは曲がった物を伸ばすという意味だそうです。
おぉ、これは易筋行ではないですか。
そう。この練功法が仏教の物として少林寺に伝わって、僧たちの間で気功や少林拳となっていったのです(武術の形式自体はそれ以前のヒンドゥーの武術にルーツがあり)。
それを知り、今回私が流れを遡上してきて、いまチェンマイにいる次第です。
外では鶏が鳴いています。初の散歩に出て朝食を探しに行きましょうか。