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今日のキャリステニクスと伝統内功キャリステニクスへの私見 4・肩

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 コンヴィクト・コンディショニングを始めて極めて効果を痛感できた関節が二か所あるのですが、そのうち一つは肩です。

 プル系のきついのに入るや否や、セット後に肩の肉が痛い痛い!!

 三角筋と言われる筋肉です。ここにとても負担がかかっています。

 ウェイド先生が、コンヴィクト・コンディショニングを数か月するとやばいくらいの三角筋ができると言っている場所です。

 このプル系というのはいわゆる懸垂運動なので、一般には肘回りが痛くなると思われがちなのですが、最初は三角筋でした。終わるや否や肉を掴んで推拿してこわばりを解したものです。

 これは非常に面白いことです。

 現在のメニューでは上腕二頭筋が痛くなるので、懸垂らしい効果が出ていると思うのですが、まずはそのご本尊に行く前に関節や腱を強化してしっかり下地を作っていくのがこのシステムの素晴らしいところです。

 その段階が肩の三角筋への痛みです。

 三角筋というのは、人体で最も脱臼しやすい肩の球体関節に被さるような形状をしており、胴体と上肢をつなげる役割を持っています。

 キャリステニクスに力を入れるようになってから、昔のレスリング時代の体に近づいてきたと書きましたが、レスラーはここが発達している人が多い。

 総合格闘技の選手の体を見ても、レスリングの巧者はここが砲丸のように膨らんでいます。

 昔、この筋肉の大きさがボクシングでのKO率に比例するという話を聴いたことがあります。

 これは不思議な話にも聞こえます。

 ボクシングという、腕を伸縮させて相手を打つ競技においては、もっとも動作の大きくなる肘関節を動かす筋肉、二頭筋や三頭筋が勝負のカギとなりそうなものです。

 もちろん、ボクシングはKO能力がすべてではないのでしょうが、この場合はそこは割り切りまして、上肢の筋肉だけにお話を絞りますと、やはり不思議に感じます。

 さらに、先ほどレスリングの選手に目立つと書いたのですが、ボクサーはそれほどここが発達しているとは限らないのです。不思議です。

 しかし、これはなぜなのかということが最近見えてきたように思っています。

 この三角筋は、先に書いたように上肢と胴体を繋いでいる筋肉です。

 レスリングで取っ組み合って腕の操作で同じような体格の人間を投げようと思ったら、腕の力を主体にはしません。

 体の力を伝える道具として腕を用い、そのための接続部として三角筋が必要となります。

 これ、面白いことに同じくらいの体格の相手を掴んで操作するというのは、自分自身の体重を前足で運ぶというのと非常に似通った働きとなりませんでしょうか。

 レスリングがキャリステニクスを重視しているのはこの見方をするととてもわかる気がします。

 では、ボクシングにおいてはどうでしょう。相手を打つのに使うメインの動作においては、それほど肩の関節は関係がないように思われます。

 以前、キックボクシングの試合で、大ぶりのパンチを放った選手がそのまま肩を脱臼するのを見たことがあります。

 重いグローブを着けて振り回しているのですから、納得がいきます。ちなみにその選手は対戦相手に治してもらっていました。リングの外では整骨の先生をしている人だったそうです。

 余談はさておき、パンチで肩が外れるというのは珍しくない事故だそうです。

 では、なぜこのようなことが起きるのかというと、肩がリラックスしているからではないでしょうか。

 素早く、軌道の広い可動をしようと思うと三角筋はリラックスしていないといけません。

 そのためには、巨大な三角筋は可動域を妨げる邪魔な肉かもしれません。

 その、邪魔なはずの肉がなぜKOを生むのでしょう?

 これは、この筋肉が懸垂に使われるような、自重を腕とつなぐ物であることを考えると見えてきます。

 すなわち、拳の当たった対象に自重を伝える筋肉なのです。

 つま先立ちになって届く高さの鉄棒を片手でつかみます。その鉄棒を引き寄せると、体重が腕によって持ち上げられます。

 ろくぼくを登ったり雲梯で移動するときも同じですね。

 手と体重を繋いでいます。

 もし三角筋の力が足りなければ、さっきのボクシングの選手のように脱臼です。

 だから初歩のプル系キャリステニクスをするとここに負担がかかって痛い訳です。それが訓練になる。

 この力の働きが、引くときでなくて押すときに働くと強力なパンチとなります。

 体重とその踏み込みを、三角筋を連結部として腕に伝えているという仕組みです。

 しかしこの三角筋の発達、実は伝統中国武術でもあまり見ません。

 多くの老師はそのあたりがのっぺりとしていて海獣のような体型をしています。

 これは、上肢と胴体を繋ぐ役割と別のルートを中心として行っているからです。

 とはいえ、一部少林拳の特定の練功をした拳士の中には三角筋の発達を見ることができます。

 なので、あっても邪魔になるというわけではないのではないかなあと私は思っています。

 ただ、なくても別の本道のルートが強ければそれでいい部分でもあります。

 この、力の伝達のルートの違いというのはコンヴィクト・コンディショニングと伝統練功の最も大きな差でもあります。

 その一端に「腱」という物への考え方あります。

 それは次回に続けてゆきましょう。


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