意外かと思われるかもしれませんが、コンヴィクト・コンディショニングのマニュアルにおいては、姿勢に関する注意が存外に目立ちません。
これは、とにかく姿勢に関する要求から始まりがちな伝統キャリステニクスとは大きな違いです。
単にマニュアルでことさら取り上げていないだけかとも思ったので確認したのですが、挿入されている写真や外部の動画を見ても、彼等キャリステニクス・アスリートの姿勢は我々からするとちょっと恐ろしい物になっていたりします。
おそらくは、関節の強さや腱の強さ、実技時の力の繋がりで怪我をしないように保護されているのでしょう。
姿勢に関する注意で目についたのは、ぶら下がる時は肩を入れろという注意くらいのように印象しています。抜けますからね、肩関節。
姿勢とは、関節のセット、ステイの仕方と言い換えても良いでしょう。
これは力の流れの正常化をはかると同時に、激突時の強度の保証となりますので、中国武術では絶対に守らなければならないところです。
とはいえ、平気で腰が抜けている写真を堂々とさらしている先生も居るので、まぁ何か特別な応用編の力のつなぎ方をすればそれでも大丈夫なこともあるのでしょう。
私も肉付きの関係でおしりが出ていると見られそうなので、説明時はヒップポケットに財布を入れないようにしたりと誤解を与えないよう注意をしています。そのくらい、ここは大切なところです。
この力の繋がり、前にも書きましたが、コンヴィクト・コンディショニングではフロント・チェーン、バック・チェーン、左右の側面のラテラル・チェーンの四つだと考えています。
私たち伝統内功では、前後の任脈と督脈、その中の衝脈、また横に走る帯脈などの奇脈の開通を始め、その他の経絡すべて、また五臓の勁などを含めて全身の膜を力の伝達ルートと考えています。
我々の気功の師である謝明徳大師によると、皮膚の下に勁は通っているとのことで、頭皮からつま先まですべてに勁は通る。
この開発が練功の大きなカギとなります。
このため、コンヴィクト・コンディショニングでは四本のチェーンで身体の基礎構造を作るのに対して、我々のやり方ではまず鉄線を作り、そこに経絡でネットを作り、さらに五臓もそれぞれに力を響かせてゆくという多重構造であるという比較が出来ます。
これはそこに働く力の違いも大きいと思われます。
コンヴィクト・コンディショニングで用いているのはあくまで種類を問わない筋力であるのに対して、内功ではあくまで勁。
私が行っているのはコンヴィクト・コンディショニングを参考にはしているけれどあくまで伝統の練功であると初めに明文化したのは、この本質的な力の質の差異があるからです。
言い方を変えると、コンヴィクト・コンディショニングのやり方は勁を用いても可能であり、かつ極めて有効であるということです。
と、言う訳で、比較と分類の結果、これらは非常に能く共有できるということを主張したいと思います。