その後、レッド・バロンは自分の機へのカスタマイズを始めます。
前後に機銃を取り付けるのですが、同僚のパイロットたちからその有効性を疑われる物の、見事に撃墜をマークしてゆきます。
しかし、接近戦に持ち込む戦法に拘り過ぎているためか、やはり自身も撃墜され、また「あたたたたた」と生還したりしています。
ほんとに、昔の人というのは頑丈に出来ているのです。人生で何度も撃墜されても、たんこぶや骨折が治るとまた空に帰ってきます。
この姿勢には退役という概念の薄い騎士と言う生き方が反映していたのかもしれません。
そして落ちるたびにバロンは「よし、覚えた」とまたレベルアップしているのです。
とはいえ、その僥倖がいつでもだれにでもあるとは限りません。
彼に接近戦の極意を伝授した師匠やその部下たちは、同様の空中戦を繰り返すうちに次々に戦死してゆきます。
この危険な戦いには騎士の時代の習慣が残っており、戦闘の模様や撃墜は公式な記録が取られており、空中戦時にはそれぞれの機の模様からどの部隊のどのパイロットが誰と戦っているのかが確認されていました。
バロンの名を挙げたのは、イギリスのエースであったラノー・ホーカー少佐との一騎打ちだったと言います。
このドッグ・ファイトは45分にも及んだと言われています。
エース同士の死闘に勝利した後もバロンは次々と軍功を挙げ、当時の軍人の最高位の勲章であったプール・メリット章を授与します。
それを機に彼は当時のエース・パイロットだけを集めた部隊に配属されます。
この隊の機には識別のために赤いマークが付けられるのですが、バロンはここで全体を真っ赤に塗ります。
これにより、彼はレッド・バロン、または赤い悪魔と呼ばれるようになりました。
つづく