前の記事でプロテインが最大限真価を発揮するシチュエーションと、それはあまり健康に良くない可能性が高いということを書きました。
しかし、平均的な日本人のたんぱく質不足は良く語られるところです。ダルビッシュ選手も言っていました。
そこで、通常の食事に加えて摂取する分にはあるいは適正なのかもしれません。
プロレスラーや増量期のボディ・ビルダーのようなレベルの食事を摂ろうとすると、通常は塩分や脂質を過剰摂取してしまうがします。
ただ、それでもプロテインは必要ないという考え方もあります。
私ももう数年、プロテインは飲んでいないのですが、それほど痛痒は感じていません。
まぁ、代わりに小腹がすいたらゆで卵を食べたりすることは日常ですし、それが時にはプロテイン入りのチョコレートになることもあります。
それ以上の依存は必要が無いとするのは、そもそも食事を筋肉にする時に最も重要なのが、体質であるからだということがあるからです。
そりゃそーだよー。そこで付かないからプロテイン飲んでるんだよー。という声が聞こえてきそうです。
この部分を、もう少し掘り下げてみましょう。
この、体質と筋肉の考え方は、伝統的な身体観によります。
もともと、体質と気質という考え方があります。
気質というのは性格という意味ではありません。
その人の気、身体を通るエネルギーの質です。
オカルト的な物ではありません。循環がいいとか代謝が悪いとかホルモンの分泌が良いとか自律神経が崩れやすいとかそういう奴です。
これは生まれつきの物があり、それに合わせて漢方の処方や気功を行ったりします。
つまり、同じものを食べても筋肉の付きやすい人と付きにくい人がいるというのはここに由来します。
コンプレックスに歪んだ人はすぐに、それは優れているか優れていないかの問題だと短絡してコンプレックスの元にしたがるのですが、そういう考え方はしません。
気質も体質も固有の物で優劣などはない。
それが陰陽思想です。
西洋的な考え方だと、筋肉の話でいうなら付きにくい人は劣っているのだから筋肉の元になるプロテインを沢山取りなさい、ということになるのですが、それをしない。
ではどうするのかと言うと、筋肉が欲しければ体質や気質を変える。
刑務所トレーニングのポール・ウェイド氏はこのことを体で学んでいます。
囚人の食事と言うのは、筋肉量によって調整してもらえるものではありません。
デブもチビも同じものが出されます。
そして、二十年という長い収監生活の中で、ウェイド氏はひょろがりからマッチョに巨大化していったそうなのですが、比例して食事が増えたり良くなったりする訳ではありません。
もちろんプロテインもない。
これは、タンパク質摂取と筋肉の直結関係を語るフィットネス界の常識からするとだいぶ外れています。
また、食事の内容自体もアメリカでは管理がずさんだそうで、とても日本人が思うような栄養バランスが整ってはいないようでした。
ウェイド氏曰く「笑ってしまうような貧弱な食事」だそうです。
つまり、その貧弱な食事で強い身体が作られるというのは、栄養を吸収する自分の身体が換わっていっているのです。
これこそが本当のフィットネスだとは思いませんか?
そのレベルで身体を換える。
これをするのが、伝統的な練功法です。
昔の人たちは、現代フィットネスの考えからすると圧倒的に貧弱な食事しか摂っていませんでした。
けれども、超人的な体力があった。
日本でも江戸時代の人の移動距離や担いだ荷の重さが記録されているのを見ると、常識離れした物があります。
ほとんど平均値が超人です。
昔の人は頑丈だ。とはこのことで。
この、野生に近い人間でいられたというのは我々からするととても幸せな身体能力であるように思います。
それを可能にしたのが、脊椎の中の神経伝達物質の分泌だと言われています。
成長ホルモンの分泌が、少量の栄養同士を結び付けて肉体を生成する。
これは環境適応の力に由来すると言います。
もっとも強い生物とは、適応力の強い生物だというのがダーウィン先生の考えだそうですが、ここでも生物の中の適応能力が物を言います。
貧弱な食事と、体力を要する生活。
これが進化を促しました。
この適応力は極めて短い時間で影響をおよぼすらしく、栄養過多でありながら日常的な運動量が低い環境にいると、たちまち劣化、肥満が始まります。
現在、アメリカの子供たちの肥満が問題になっていますが、健康診断をすると彼らの多くが栄養失調状態にあると言います。
大量の食事を摂るにも関わらず、身体を使っていないために必要な栄養の吸収や合成をせず、脂肪だけが蓄積されてゆくのです。
現代人の多くが同じパターンに陥りがちではないでしょうか。
使っていないので、身体の機能が眠ってしまっているのです。
これを活性化することがポイントです。
そうすれば、大量のプロテインを飲む必要はなくなります。
疲労の度合いに合わせた食事の摂取を随時すれば良いし、それを越えるレベルの過酷な活動は単に不健康なので自重すると言う自己管理も生まれます。
不健康な現代人の生活の中に、断片的に人工的な運動や栄養摂取を加えるのではなく、生物としてそもそもあった状態の生活を取り戻すことで、栄養摂取の健全化が図れるというのです。
食事の吸収力と栄養素の合成力が上がれば、それほど沢山の物を取らなくてもきちんと身体に付くし、疲労が取れやすい。しかも、脂肪に回るだけだったカロリーが、免疫力を高めて疲労を回復させるという本来の役割に活用される身体になると言います。
と、ここまで聴くといいことだらけのようですが、そのようになったときの体形は別にハリウッド・ビューティーな物だとは言っていません。
昔の人っぽい体形です。
私自身も、疲労回復のために毎晩ポテトチップスを食べていますが、太りはしません。
でも、だからと言って痩せるわけではないので、うーん、私個人はこれでいい感じ、というとこでしょうか。