最近、縁あって翻子拳の一派に触れることがありました。
この拳、これまでも時々出くわしてきています。
おそらく有名な考査試合の時以降、名門の武術として広く伝えられてきたのでしょう。
それ以前でも、古くから伝わる武術として知られており、明の時代のかの倭寇対策の時に「八閃翻」の名で「上々の物なり」と紹介されています。
師叔も確か香港で有名な鷹爪翻子が出来たように記憶しています。
私も東北地方に伝わる物と、古いスタイルの別の派の物の二つをこれまでに齧ったことがありました。
この拳には岳飛始祖説が伴っており、私が今回触ることが出来た物もまさに岳家軍の拳だということでした。
だとすると、南宋の武術なので私の研究とは海賊武術、海上王朝で繋がることになる気もします。
今回教えてくださった先生が言うには、この拳は軍隊の調練の拳だということです。
私が時々言う「家系」ではなくて、岳家軍の兵士を団練するときのイメージがあるのかもしれません。
さらに言うには、元々はいわゆる中国武術のスタンダードな形ではなく、格闘技だったとのこと。
確かに、岳家散手という言い方の派を聴いたことがあります。
その、群体格闘技、散手の技をつなげて套路に編んだりして編纂していったのがこの岳家系の翻子だと言います。
だとしたら、それは考査試合で強かったというのも納得のお話ですし、同じく軍での調練について考察されていた倭寇対策時に好評されていることにもうなずけます。
私が行っている、太平天国系の蔡李佛にもその側面があります。
その、単純に格闘技的な側面とそれに付随する中身の調和がとれた時に、このような武術はさらに素晴らしい存在になります。
日本ではそのようなタイプの中国武術がほとんど知られていませんので色々と誤解を生んでいるようですが、それだけ中国武術の実態が知られていないということでしょうから、これは仕方のないことでしょう。
これからもコツコツ書いてゆきたいと思います。