昔「ここが変だよ日本人」という、様々な国の人がひな壇に並んでディスカッションをする番組がありました。
テリー伊藤の番組なのでやらせだらけのインチキ番組だと思うのですが、興味深くいつも楽しみに見ていました。
その番組に、ゾマホンさんというベナン出身の名物キャラクターの人がいて、ことあるごとに激高してアメリカは汚い、日本人はアメリカに洗脳されている、というようなことを繰り返していました。
彼の突飛なキャラクターのせいでちょっと変人扱いされてまともに自説が相手にされず、また始まったよと言うような扱いをされていたような印象があります。
でも、彼の言ってたこと、ホントですよね。
アメリカは共産主義の人たちが好きな言い方で言う「米帝主義」で世界をアメリカの支配下に置くべく戦略を展開しています。
だって、とうのアメリカ自体がそれを自覚的に「マニュフェスト・ディスティニー」であるとして行っているのですから。
アメリカ合衆国による「世界を文明化する使命がある」という、ジャクソン大統領が方向づけた謎の運動体意識は、ワールド・ポリスだなどと半ば公認されて世界で認識されてきました。
女性の性器切除をする風習や、中東圏での宗教的な思想を「現代化されていない野蛮な風習だ」としてそこに介入し、人権運動だとして平定するという行動パターンは「大量破壊兵器があるのでけしからん」と言って乗り込んでいった湾岸戦争で馬脚が現れました。
しかし、それまではアメリカの自由主義、民主主義の方が、宗教的な政治や風習よりも高級な物であると言う印象付けをしていたことには変わりがありません。
ですが、この介入して行って他国の風習や価値観を「文明化」するマニュフェスト・ディスティニーという物を調べるとすぐにわかることがあります。
試しにウィキペディアででも調べてみるとはっきりします。
マニュフェスト・ディスティニーとは「世界を文明化しろと神がアメリカに与えた使命」だとされています。
神なんですよ。
これ、動機は個人的な神への信仰心であって、宗教行事なんですよ。
いままで「文明化」される国は宗教に支配された野蛮な国で、アメリカはフラットな民主主義政策に乗っ取った上の視点の国だって印象を持たされていませんでしたか?
全然違うんですよ。アメリカもプロテスタントの宗教的な使命感で動いていて、宗教が他の宗教に攻撃して行って侵略してるってだけのことなんですよ。
本質的に十字軍とまったく変わってない。
だからゾマホンさんは怒っているんですよ。
彼は、自国では沢山の人を助けてインフラや教育施設を整えている英雄だそうです。
アメリカに対して陰謀論を持っている発展途上国の劣った変人などでは断じてありません。
ここは武術団体のページなので武術について目を向けてみましょう。
アメリカに居ると、コンバット・ジュードー、ストリート・ケンドー、コンバット・ニンジュツ、ジークンドーなど、昨日今日出来た偽物マーシャル・アーツだらけなことに気が付きます。
どれもファスト・フードと同じ、元々ある本物を生半可に齧った素人が良く分かってないまままぜた劣化版です。
これもまた、必然なのです。
というのも、アメリカのグローバナイゼーション、つまり「文明化」とは、他の国もアメリカにしてゆくという増殖現象となります。
自分たちのサイドについた国を飲み込んで自国の周辺領域とし、それをアメリカ化という希釈をした物にしてデッドコピーにすることになります。
それが彼らの言う「文明化」です。
日本も韓国も、歴史上その文明化の洗礼を受けてきました。
アメリカ化して、それがかっこよくて素敵で自由な物だと感じて憧れてきました。
もちろん私もです。だから二十歳の頃にアメリカを旅していたのです。
日本の現代武道の代表である柔道は、レスリングをベースに作られました。
空手道は、沖縄の唐手です。
そして唐手は琉球王国に伝わった中国武術の断片でした。
それを日本人は空手道という日本武道に作り変えました。
当時の沖縄の唐手家の中からは「唐手というのは流派の呼び名ではなく、空手などとするべきではない。流派として呼ぶなら少林拳と呼ぶべきだ」という声が上がりました(笠尾恭二著「中国武術大鑑」参照)。
その空手から、テコンドーという物が生まれました。
昭和の大空手家であり、朝鮮人である大山倍達総裁は「テコンドーは古武術に由来すると言っているが、あんなものは昔は影も形もなかった」と言っています。
いずれみな、ねつ造、創作マーシャル・アーツです。
これらがみな、アメリカ式の「文明化」の思想に乗っ取った行動の結果です。
その中でも自覚的で良心的な派は、明確に事実と意図を全面に打ち出し、新たなコンセプトを打ち上げてまったく違う現代武道としての価値を得てゆきます。
柔道などはその成功例と言えましょう。
しかし、それは当代随一の教養人であり、国際人であった加納治五郎という天才の教養があったからこそなされた例外。
そのような特別な人以外の「みんな」のためにまるで無自覚に伝統や本物は食い散らかされて伐採されてゆき、残骸を繋ぎ合わせたジャンク・フードの山となります。
これを「フロンティア・スピリッツ」と言います。
中国武術も、フィリピン武術も、みんなこの「文明化」をされてファスト・フード・マーシャルアーツにデッド・コピーされています。
現代人が偽物の食べ物を食べて肉体を作り、偽物マーシャル・アーツをして何かした気になってしまうのは、アメリカナイズされいるからなんですよ。
人間が偽物になるというのが、このマニフェスト・ディスティニーなんです。
そうなるとどうなるか?
希釈されて、アメリカ人になるんです。
そうして、世界のすべてをアメリカにする、というのが第七代大統領、アンドリュー・ジャクソンから続いているアメリカの国策としての運動ベクトルなのです。
私たち、その中で生きているんですよ。
気付いてましたか?
知らないうちにその流れに乗せられていたんですよ。
ジャクソン大統領の民主主義の基本方針を覚えていますか?
「普通の人の政治」ですよ。
みんなと同じことをする、みんなと同じってことを基準とするっていう物ですよ。
だからみんな、隣の人と同じに「みんなそうしてるから」って言って、飲み込まれていくんです。
つづく