ここまでアメリカと大統領たちについて書いてきましたが、アメリカ歴代大統領というと、マウント・ラシュモアの岸壁に掘られた四人の大統領像を思い浮かべるかたも多いかもしれません。
ワシントン、ジェファソン、ルーズヴェルト、リンカーン大統領ですね。
この彫像も、昨今のBLMによるアメリカ見直し傾向のやり玉に挙がっています。
まず、ワシントン大統領ですが、彼は３００人の奴隷を抱える大農場を経営していました。
これが一つ。
しかし、当時の時世からすると参政権を持つような富裕層においてはそれは当然のことでしょう。
「当時の時世に乗っ取った物であり差別や偏見を助長する意図の元に行われた物ではありません」というテロップが流れるタイプの物であるように受け取る公正さは必要だと思います。
ただ、叩けば埃は出てくる。
ワシントン大統領、歯痛に悩まされていたそうなのだけれども、彼は抱えていた奴隷たちから生きた歯を引き抜いて入れ歯を作って使用していたそうです。
これは……アウトでしょう……。
大変に残酷なことに聴こえる行いです。
人の肉体を人の肉体だとみなしていない。
当然ですが、有色人種に人権を見ておらず、自分の所有物としての肉体として扱っています。
隣のジェファソン大統領に至ってはそれどころではありません。
彼はアメリカ独立宣言の執筆者であり、アメリカでは学者が選ぶ「最も偉大な大統領」に選ばれた偉人です。
彼は、ネイティブ・アメリカンの人達を「高貴な野蛮人」と呼び、他の多くの白人種と違って彼らの文化を尊重し、常に敬意を払っていました。
そして、彼らの強制移住政策を創案し、民族浄化を始めた人物です。
おっと、出ましたこのRED式目ん玉グルグル現象。
まともなことを言ってるな、ちゃんとした人なんだな、と思って目を合わせたら眼球がグルグル回って渦巻きになってました的な、予想の斜め上に至ってる状態。
「彼らは高貴な野蛮人だ……。素晴らしい……民族浄化しよう」
ジャクソン大統領の民族浄化は、このジェファソン大統領の国策に乗っ取っています。
ジェファソンの政策によっていわゆる「インディアン戦争」が起き、彼は前線で戦う将軍に対して「彼らは我々の一部を殺すだろう。我々は彼らのすべてを破壊するのだ」と指示した手紙を送っています。
彼は奴隷制に反対していましたが、当時の奴隷制反対派というのは以前に書いたように奴隷貿易に関する経済的な理由に基づいたものであり、決して人権意識に基づいたものではありません。
ジェファソンが残した書簡の中で、彼は黒人が白人より劣った民族であり資産であると書いています。
彼の行為に関する訴追のクライマックスはここからです。
彼の妻が所有していた奴隷の一人に、サリー・ヘミングスさんという人がいました。
彼はジェファソンの奥さん、マーサ・ウェイルズの父親が奴隷に産ませた子供でした。
つまり、自分の異母姉妹の奴隷でした。
このようなことはアメリカの奴隷に対する意識の中では珍しいことではありません。
彼ら奴隷主はそのようにして、自ら奴隷に種付けをし、その子供を奴隷にして繁殖していたのです。
非常におぞましい考えに感じられますが、アメリカ人たちにとっては当たり前だった。
なにせキューバを進行してそこに黒人牧場を作って大量繁殖させて全国に販売しようとしていたくらいです。
そのようにして奴隷主に種付けされて生まれ、自分の姉妹の奴隷として相続されたサリーさんは、その後ジェファソン家の資産になります。
そこでマーサ・ウェイルズが死亡したのち、所有権はジェファソンに移るのですが、ここでジェファソンが当時十代だった彼女に手を出します。
この頃の彼女に対して、外見はほとんど白人と変わらなかったという証言があります。
彼女の母親の代から白人種による交配が行われていたためだと言います。
サリーさんは六人の子供を産みましたが、これは当時の記録では父親の名が記されていません。
ジェファソンが父親だからと言われています。
彼女の子供たちの内の半分は、その後、白人として生きることになったそうです。
残りの三人については、奴隷として生きたともいわれています。
しかし、その後四代後のフレデリック・マディソン・ロバーツさんは、西海岸で初めて公職に選ばれた黒人種として１９１９年から１９３４年までカリフォルニア州議会に勤めたと言います。
つづく