岳家拳で、将手という手形を教わりました。
これは、親指と人差し指だけでCを作る物です。
将手、老師は「ロシュ」とおっしゃって居て、私は中国語が分からないのですが、おそらくは将手という漢字ではないかと思われます。
実際に、将手翻子拳という門派もあります。
翻子拳と言えば有名なのが鷹爪翻子拳ですが、三本指の鷹爪だけでなく、二本指の将手翻子拳もあるのです。
この二本指で、相手を掴んで拿をしたり摔をしたりします。
点穴に適した手形であるようです。
いまから、ちょっと変なことを書きます。
ちょっとイメージしてくださいね。
両手の指を、Cにしてください。
そして、目の前にいる相手が突きなどを打ってきたと想像してください。
その腕を、自分の顔前に立てた両腕の前腕で受け流します。
受け流しざま、自分の前腕を滑らせて、相手の腕にCの字の将手を寄せて行ってそのままそれでひっかけます。
そこから摔(投げ)を放つのですが、そのうちの多くは、そこから足を相手の足に引っかけて将手でコントロールして転ばすという物です。
さぁ、予告していた変なことです。
「あれ? 蟷螂拳ぽくない?」
蟷螂拳についてはまったく知らないし、あくまで印象論、素人のオタクみたいな与太話なんですけれども、そんな風に感じました。
これ、考えてみたらつながりがあってもおかしくはないのです。
というのも、戚継光将軍が翻子拳や鷹爪功を手本として作った戚家拳は、その後、山東地方などに拡散しているからです。
蟷螂拳は伝説によれば十八派の武術をピックアップして作ったとのことですが、これ、戚家拳の故事と非常に見ています。
以上のようなことを鑑みると、これが当時の倭寇の一件でアップデートされた中国武術の一つの典型の姿なのかもしれません。
一例や二例だけでなく、ある程度の数がまとまっていないと中国武術のアップデートとは言い難いですからね。
のちの世で有名になった、馬氏の翻子拳を少しだけ齧った時、素人にどんな武術か説明するためにわかりやすく「高速で八極拳をしているような見た目を想像していいと思う」と言ったことがありました。
八極拳に関してもまったくド素人なのでいい加減なことを言っているとは思うのですが、馬氏の拳、通備拳とは劈掛拳、八極拳、翻子拳を併せ持った武術なので、これは理論上あながち間違いではありません。
私の老師が曰くには、岳家拳の発勁は八極拳や形意拳に近いとのことです。
昔、この部分を研究していて、八極拳や蟷螂拳の本を出していた先生がおりましたが、えぇ、ここにありましたよ、それらを兼ね備えた中国武術が。