なんと!
五祖拳の新しい套路を教われてしまいました。
すごい……。
「ちょっと、まだ早いのだけど……」
と言いながら、老師が与えてくれました。
その套路の名は、二十拳と言います。
その名の通り、二十回拳を打つのがメインのコンセプトであるような套路です。
日本人唯一のフィリピン武術のグランド・マスターにして、中国武術のアジア圏での分布を研究している身としては見逃せないところは、その動線です。
最初に習った三戦の套路の動線は、まっすぐ行ってまっすぐ戻るのがメイン。
後ろ向きに下がってくるのが少し珍しいですが、シンプルで骨太な物です。
老師曰く「動きは簡単」でも「中身は難しい」。
二十拳ではいきなりそれとはまったく違います。
ほぼ同じ位置で、あっちを向いてこっち向いてまたあっち向いて、と方向転換しては空手の正拳のような突きを繰り出します。
この動きは、ラプンティ・アルニスでとても覚えがある……。
突くときに片手で掴んでいる(擒チンというそうです)のもまたアルニスっぽい。
そして、本部朝基先生の空手もみんな片手でこうやって掴んでいたな。
やはり、ここにも伝播の痕跡が。
この套路を習った日の夜、とても背中が疲れました。
これはこの週にやってきたキャリステニクスの成果に稽古でトドメが刺されたかなあ、くらいに思って、寝ている間に固まらないといいなあなんていつも通りにのんびりした感じで眠ったのですが、目が覚めると疲れの感じが変わっていました。
お昼前くらいにこの違和感に気づいたのですが、これ、少し前まで言ってた腎と肝の消耗に似ている……。
しかし、場所が以前より高い。
ということは、肺臓ですね。
肺臓が消耗している?
なぜだ?
肺臓は五行で言うと金行か。
金気の勁はなんだっけ?
金属は結晶する、集まるだ。
金行の勁は集約の性質だ。
そうか。
確かに、空手の正拳突きのような突きは力が集約されるように使われている印象があります。
なるほど。だから肺臓の勁かこれは。
実際には空手ほど握りしめるようにはやっていません。でも、中国武術の伸び続ける易筋の勁を用いる中では、比較的集約のニュアンスが強い形で私はやっています。
だから肺臓、金行の勁と言って良いかと思います。
そして、金行の母体は土行だな。
土行の勁は揺れる性質がある。
そして土行は変容の気か。
そう考えると、五祖拳のような鶴拳類が発勁の前に体を震わせていたり、発勁したあとに揺れが残ってそこから次を打つという構造にはこの土行の性質があるような気がします。
逆に、火克金で火行は金行を溶かしてしまうからそれは避けた方が良いのか。
火行は炎上の性質でその勁は上に上がる。
つまり、この二十拳のような突きを放つ時は上に上がってしまわない方が良いのかもしれない。
鶴拳類には浮沈という拳訣があります。
浮というのが上に上がるということなので、逆に沈の沈んだときにこの拳は用いるのが良いのでしょう。
このように、陰陽五行理論で見ることが出来るのがやはり中国武術の面白さの一つですね。
そして、肺臓の疲れを同物同治の理論でなおそうとするなら、食べるべきは肺、ホルモンで言うフワというところですね。
でも、フワなんて大昔に新大久保の中華鍋屋さんで見て以来出くわしてない気がする。
しかし心配は無用。
五臓六腑は対応しています。
肺臓に対する腑は大腸です。
これならメジャーですぐに食べられますね。